学生と参拝したインドの仏跡でのこと

2025年9月、33名の学生と12日間のインド研修を実施した。「インドの宗教と文化」という大学の授業の一環として、仏跡を中心にインドの文化や宗教を学んで帰った。仏跡以外にも世界遺産タージマハルの見学、インドの大学生との国際交流、そしてインド料理の堪能など、学生たちが喜んで参加してくれたことは何より幸いであった。

仏跡では学生たちと勤行をした。中でも6日目、釈尊入滅の地・クシナガラでの勤行中、私は突然感極まり、読経の発声ができなくなってしまった。その前日の夜の学生の感話を思い出したからだった。

前日の夕食の後、全員でミーティングをして、何名かの学生にインドでの感想を話してもらった。ここまでの日程の中で訪ねた仏跡では、私たちの周囲にも静かに礼拝・合掌、あるいは瞑想に集中する世界各地の僧侶が多くいた。僧侶資格を有するある学生は、東南アジアや東アジアなど、世界の仏教徒たちの中で自分が僧侶のかっこうをして読経していることがなんだか恥ずかしかったという率直な感想を述べてくれた。自分より真剣に参拝している外国の仏教徒の姿に圧倒されたのかもしれない。その学生は「間衣と輪袈裟を付けた自分の姿がコスプレのようだった」と正直に感じたことを語ってくれた。私も、おそらく他の学生僧侶も、思わずハッとさせられた。しかしその次に感想を語った僧侶ではないある女子学生は、その後ろで一緒にお参りをして「勤行しているみんなの姿がとてもよかった」「自分は最初仏教に関心がなかったけど、仏教に興味が沸いた」と話してくれた。

他国の仏教徒と自分を比べて、今の自分はこれでいいのかという問いをもった学生、でもその後ろ姿を「かっこよかった」「すごかった」と思って仏教に関心をもった学生。12日間、インドという地でさまざまな思いを懐いた33名の学生たちを誇りに思う。

PROFILEプロフィール

  • 戸次 顕彰 准教授

    【専門分野】
    仏教学

    【研究領域・テーマ】
    中国仏教思想・仏教史/漢訳仏典/戒律や律僧をめぐる東アジア仏教史