子どもの遊びを再考する

鴨川の土手を歩くのが日課である。公園で遊んでいる親子が少なくなった気がする。子どもたちの楽しそうな声が聞こえると保育園の集団であったりする。保健所で子どもの発達相談をしているが、新型コロナウイルス感染症拡大から、子どもと家にいることが多くなり、親のストレスが増えたと聞く。法人などの調査でも多くの保護者が子どもの外遊びが減っていると感じていた。外遊びは子どもの発達を支える。公園の遊具や砂遊び、かけっこやかくれんぼなど子どもは五感をフルに使って遊ぶ。虫取りや落ち葉拾い、雪遊びなどその季節でしか体験できない遊びもある。子どもにとっては、家の前の路地も広く長い。子どもは遊びを創り遊びを発展させる。近所の公園が未知の世界になりダイナミックに冒険が展開される。このような遊びは子どもの運動面だけでなく社会性を養い情緒を豊かにする。子どもの遊びを守ることは大人の責務である。

さて、親子の間で行われる遊びはどうだろうか。電車の中や病院の待合室などで子どもがゲームをしている傍らで、親が自分のスマートフォンを見続けている姿を目にすることが多くなった。モバイル機器の普及により私たちは高い利便性を得ることができるようになり生活の中で様々な恩恵を得ているが、一方で親と子の遊びへの影響が危惧される。子どもは親との遊びにおいて、親と触れ合い肌のぬくもりを感じ、互いの表情やしぐさ、声色などから、互いの気持ちを読み取ったり楽しさを共有したりする。遊びの中で子どもは親を求め、親はそれに応えようと関わることにより子どもとの愛着が形成されていく。この愛着形成は子どもの意欲や行動の基盤になるとともに、後の対人関係や行動を一定規定することになると言われている。幼児期、子どもと一緒に遊ぶ、絵本を読んであげるなど、親子遊びの大切さは、情報機器が発展した現代だからこそ、よりその大切さが問われている。
 

PROFILEプロフィール

  • 井上 和久 教授

    【専門分野】
    特別支援教育

    【研究領域・テーマ】
    障害のある子どもの早期発見・早期支援/早期からの支援の継続方法/学校等における支援システム