今ここにある日常が学びの対象で、
かつ答えが何通りもあるからおもしろい
私が大谷大学を選んだ理由は2つあります。1つは、清沢満之先生や西田幾多郎先生をはじめ、著名な哲学者ゆかりの大学であることに加え、図書館の蔵書数も多く、哲学についてしっかり学べると思いました。もう1つは、高校時代にキャンパスを訪れて、大規模ではないからこその温かな雰囲気が私に合っていると感じたことです。実際、知識が豊富で人柄も魅力的な先生方や、同じ興味を持つ仲間と共に学生生活を過ごすのは、私にとって何ものにも代えがたい価値ある時間となっています。
入学してから驚いたのは、哲学という学びが想像以上に多様であること。古代ギリシャから現代哲学まで、また宗教学、心理学、倫理学など、さまざまな分野を自分の中に取り込むことができ、どの授業も毎回90分という時間があっという間に感じられるほど引き込まれます。哲学以外の授業では、過去に国民総幸福量が高かったブータンの人びとの死生観、宗教観を学んだことが印象に残っています。幸福とは何かを仏教の考え方も参考にしつつ探っていく過程で視野が広がったように思います。
哲学の魅力は、遠いどこかのことではなく、今ここにあるものを問いの対象としていて、かつ、その答えが1つ限りではないところだと思っています。私たちは生きているなかで時折、壁にぶつかることがあります。中には乗り越えることが困難な壁もあるかもしれません。哲学的に考えることによって、壁を「乗り越える」ことはできなくても、壁についていろいろな方向から思考をめぐらせて、壁に「寄りそう」ことはできるのではないかと思います。この場所ではそうした営みを続ける、ゆったりとした時間をもつことができます。