Students'Voices
学生インタビュー2024年度#05

更新日:2025年10月13日

西田 朱里さん

哲学を追い続ける。乗り越える壁から、寄りそう壁へ

文学部 哲学科 第4学年

西田 朱里さん

「私にとって哲学を学ぶことは、対話のなかでみつかる他者との違いを楽しみながら、お互いにより理解しようとし続けることです」と語る哲学科4年の西田朱里さん。中学時代の苦しい時間をきっかけに哲学に興味を持った彼女が、大谷大学で見つけたものとは。

※記事に記載している情報は、取材当時(2025年9月)のものです。

Students'Voices
学生インタビュー2025年度#01

更新日:2025年10月13日

文学部
哲学科 第4学年

西田 朱里 さん

哲学を追い続ける。乗り越える壁から、寄りそう壁へ

「私にとって哲学を学ぶことは、対話のなかでみつかる他者との違いを楽しみながら、お互いにより理解しようとし続けることです」と語る哲学科4年の西田朱里さん。中学時代の苦しい時間をきっかけに哲学に興味を持った彼女が、大谷大学で見つけたものとは。

※記事に記載している情報は、取材当時(2025年9月)のものです。

本を読んでいる様子

カエルくんと考える
中学生のときに出会った「哲学」という学問

幼い頃から「考える」ことが好きで、愛読していたのは『かんがえるカエルくん』という絵本。カエルくんが友だちのネズミくんに「そらって、どこからがそらなの?」などと問いかけ、のんびり、じっくり語り合うんです。その中に私も加わったような気持ちになって、一緒に考えを巡らせていました。今にして思うと、それが哲学にふれた原体験かもしれません。

中学の頃、友だちとの関係に変化があったことで、学校に行けなくなり、ぽっかりと空いた時間でいろいろなことを考え始めました。「なぜ勉強しなければならないんだろう」「学校って何のために行っていたんだろう」「なぜ生きているんだろう」と。考えている私の様子を見た学習塾の先生が「朱里ちゃんは哲学的だね」とおっしゃいました。そのとき初めて、それまで自分がしていたことがどうやら「哲学」と呼ばれる学問に近いのだと知りました。
「哲学」という名前を使って本を探すこともできるようになり、学校に行けず苦しい時間を哲学の入門書を読んで過ごしました。しかし1人で本を読んでも答えの出ない問いが積み上がるばかり。もっとたくさんの人の意見を直接聞きながら哲学を学びたいと思い、哲学科への進学を決めました。

研究室を訪ねる様子

ある日の学内でのスケジュール

  • 2限目(10:40〜12:10)
     自宅で今日の授業の予習
  • 3限目(13:00〜14:30)
     ゼミの先生の研究室で卒論について相談
  • 4限目(14:40〜16:10)
     授業
  • 5限目(16:20〜17:50)
     図書館で課題のレポート作成や読書

今ここにある日常が学びの対象で、
かつ答えが何通りもあるからおもしろい

私が大谷大学を選んだ理由は2つあります。1つは、清沢満之先生や西田幾多郎先生をはじめ、著名な哲学者ゆかりの大学であることに加え、図書館の蔵書数も多く、哲学についてしっかり学べると思いました。もう1つは、高校時代にキャンパスを訪れて、大規模ではないからこその温かな雰囲気が私に合っていると感じたことです。実際、知識が豊富で人柄も魅力的な先生方や、同じ興味を持つ仲間と共に学生生活を過ごすのは、私にとって何ものにも代えがたい価値ある時間となっています。

入学してから驚いたのは、哲学という学びが想像以上に多様であること。古代ギリシャから現代哲学まで、また宗教学、心理学、倫理学など、さまざまな分野を自分の中に取り込むことができ、どの授業も毎回90分という時間があっという間に感じられるほど引き込まれます。哲学以外の授業では、過去に国民総幸福量が高かったブータンの人びとの死生観、宗教観を学んだことが印象に残っています。幸福とは何かを仏教の考え方も参考にしつつ探っていく過程で視野が広がったように思います。

哲学の魅力は、遠いどこかのことではなく、今ここにあるものを問いの対象としていて、かつ、その答えが1つ限りではないところだと思っています。私たちは生きているなかで時折、壁にぶつかることがあります。中には乗り越えることが困難な壁もあるかもしれません。哲学的に考えることによって、壁を「乗り越える」ことはできなくても、壁についていろいろな方向から思考をめぐらせて、壁に「寄りそう」ことはできるのではないかと思います。この場所ではそうした営みを続ける、ゆったりとした時間をもつことができます。

哲学カフェの様子
哲学カフェの様子
総合研究室
総合研究室

共感したヒューム哲学を
さらに学ぶために卒業後は大学院へ

授業以外で自分の成長につながっていると感じるのは、哲学の助教の先生が中心になって定期的に総合研究室で開催されている「哲学カフェ」の活動です。これは、哲学に興味のある人が学部・学科や学年の域を超えて集まり、1つの自分の考えをできるだけわかりやすく言語化して伝えよう、他の意見をその人の立場に近づいて理解しようと努めるので、毎回へとへとになるのですが、同時にたとえようもない充実感に包まれます。人が生きていくには他者との関わり合いを避けることができません。自分は今後どのように周囲との関係性を築き共存していきたいのかを考えるようになりましたし、その答えを模索する中で、常に多様な視点を意識する習慣が身につきました。

卒業後は、大学院の哲学専攻に進む予定です。大谷大学は、響流館3階の総合研究室に大学院生用のスペースが設けられているのが魅力です。恵まれたその環境で、「人間(私)は絶えず動き流れている知覚の束に他ならない」という言葉を残したイギリスのデイヴィット・ヒュームの哲学を研究しようと考えています。大谷大学で学んだから見つかった可能性を存分に広げ、哲学と共に歩んでいく私らしい人生を形づくっていきたいです。

私が大谷大学を好きな理由

一番の魅力は先生との距離が近くて話しやすいところ。
私は特にゼミ担当の先生にお世話になっていて、空き時間や放課後によく研究室を訪ねます。
いつも勉強面だけでなく生活面の相談にも親身にのってくださるので、心強いですね。

校舎外観

後輩のみなさんへ

哲学は難しくて、取っ付きにくいというイメージを持たれているかもしれません。でも実は、日常との衝突の中で生まれる、とても身近な問いそのものが哲学であったりもします。そうした問いについて頭を悩ませることが辛いときもあるかもしれません。しかしその時間の先で、そうした問いを、対話や読書のなかで誰かと共有でき、新たな知見を得たときの幸福は計り知れないものです。ぜひ日常の中で生まれた問いを大事に抱えながら、他者や自分に寄りそい続けましょう。

西田 朱里さん

プロフィール

文学部 哲学科 第4学年

西田 朱里 さん

兵庫県・飛鳥未来きずな高校

中学時代に哲学に興味を持ち、公募制推薦入試で大谷大学 文学部 哲学科に入学。現在はデイヴィット・ヒュームの哲学を勉強し、卒業論文を執筆する傍ら、大学院入試に向けた準備を進めている。