学びを問い続ける『もぎもぎ』

北大路駅の階段を上がったところで、大学の門を望む。今日も守衛さんと会釈を交わす。響流館から慶聞館への通路は隅々まで清潔に保たれ、教会や北大路商店街の風景を眺めることができる。この日常をいただき、4年目を迎えた。

はじめの年は、何もかもが未知の世界であった。担当する講義に馴れはじめた4月末に罹患したインフルエンザによって、学生諸君に驚きを与えてしまった記憶がまだ新しい。

2020年からの新型コロナウイルス感染症によって、さきの日常が大きく変わった。毎日、対面できない不安と互いの安否を思う感情が交錯していた。手探りで始めたオンライン講義。「リアルタイム」に届く画面に見られる学生諸君の声や姿が不思議に思えたり、ありがたく思えたりした。毎回の機器操作は手探りばかり、説明書をくり返し読む中でみつけたこと・画面を通して教えてもらったこと、これら援助があって、いくつものハードルを越えることができた。担当講義は具体的な活動が中心であるため、多くの学生諸君から、理科室で学びたいという声が届けられた。

昨年度2月頃、2回生が「模擬授業を通して理科を学びたい」熱い思いで、LINEを通した連絡を取り合い、理科室に18名が集まった。友人と教材研究を深め、オンラインで授業構想を相談する、納得できるまで実験を繰り返すなど、自主ゼミのごとく。そして、3月末、計画通り、互いの授業について真剣に意見を交換する『理科もぎ』を開いた。不安で不自由な環境の下、学生諸君が、自らもっと学びたいという気持ちを表出した出来事であった。Be Realまさに本物の学びを問い続ける学生の姿に立ち会えた瞬間(とき)であった。

この動きと学生諸君の学びは、新年度の新3回生にも引き継がれて、『もぎもぎ』と語られている。この言葉には、学びに対する熱い思いが集約されている。

PROFILEプロフィール

  • 谷 哲弥 講師

    【専門分野】
    理科教育

    【研究領域・テーマ】
    理科教育/生活科教育/教師教育