<本>を介した心の繋がり〜「かめちゃん文庫」コロナ禍の活動〜

最近、北区のわら天神近くで毎週土曜日に開かれている「かめちゃん文庫」に月2回くらい通っている。本学任期制教員として共に保育者養成に携わってくださっていた元ベテラン保育士の亀田十未代先生とその仲間たちが2016年4月にオープンされた絵本・児童書を主とした文庫である。

コロナ前には、本の貸し出しと絵本の読み聞かせだけではなく、小さなイベントも開催され、そんな日は、けして広くはない部屋の中で、たくさんの子どもたちがまさに「密」になりながら楽しんでいた場所だった。また、かめちゃん文庫の絵本や児童書は、亀田先生たちが保育や子育ての経験を生かし、丁寧に選ばれたものなので、質も良くて、おもしろい。イベントがなくても、子どもとゆっくり絵本を選んで読んでみたり、絵本の話をきっかけに子育ての相談に乗ってもらったり、安心して過ごせる雰囲気の中で、親にとっても子育てへのエネルギーをもらえる場所となっていた。

コロナ禍によって一旦はお休みされていた文庫であったが、スタッフチョイスの絵本や児童書の貸し出しのみということで再スタート。1週間10冊借りられる。「前にこの本おもしろいって言っていたし、これはどうかな?」と、その子のことを思いながら、本を選ぶ文庫スタッフと、新しい本との出会いにワクワクしながらドアを開ける子どもたちの間には、<本>を介在させた温かな関係性が生まれている。

文庫スタッフのみなさんと子どもたちや保護者たちとの直接的な関わりから生まれるほっこりした場であった「かめちゃん文庫」は、さらに<本>にお互いの思いを乗せる新たな関係も作り出している。こうして困難な時にも粘り強く工夫し続けることで、新たな価値が付加されていく。今後コロナの状況がどうなっていくのか、まだまだ見通しは難しいが、「かめちゃん文庫」で何が生まれてゆくのか、ゆっくりほっこり豊かな歩みが楽しみである。

PROFILEプロフィール

  • 西村 美紀 准教授

    【専門分野】
    教育学/乳幼児教育学

    【研究領域・テーマ】
    教育学/乳幼児教育/教育課程