「一寸先の闇」は、何色?

「やったことがないから……」「失敗したくないので、まず正解の例を教えてください」
学生と話していると、時折こんな言葉を耳にする。先の見えない状況に置かれると不安になり、躊躇し、正解を探したくなる。これは学生に限らず、私たち誰もが持っている感覚であろう。確かに、先が見えないことは怖いものである。「一寸先は闇」という言葉があるように、見えないものに不安を感じるのは自然なことである。

しかし、人生やキャリアにおいて、最初から正解がわかっていることは、ほとんどない。キャリア形成では「偶然」が大きな役割を果たすとも考えられている。何となく決めたことや思い掛けない出来事がその後の人生を方向付けるものになったということは、決して珍しくない。だから大切なのは、未来を完璧に予測することではなく、予測できない出来事を受け止め、変化に適応し、次の一歩につなげる力なのではないだろうか。

ここで、「一寸先の闇」について考えてみよう。それは何色だろうか。私たちは暗闇を「黒」とイメージしがちである。しかし、色は光が目に届き、脳がその情報を処理することで知覚される。そのため、光がほとんど届かない暗闇では、通常、物体の色を知覚することはできない。
つまり、暗闇を「黒」と感じるのは、そこに黒があるからではなく、見えないものに対する不安や恐怖のイメージによるところが大きいのかもしれない。

未来も少し似ている。しかし、「見えない」ことと「怖い」ことは、同じではない。「一寸先の闇」は、何色だろうか。今はまだ見えないだけで、その先には、思いもよらない景色が広がっているかもしれない。「やったことがない」からこそ、やってみる価値がある。正解を尋ねる前に、迷いながらでも、まず自分で一歩、進んでみよう。その一歩の先でしか見えないものが、きっとある。

PROFILEプロフィール

  • 三宮 直樹 准教授

    【専門分野】
    産業社会学/地域政策/社会保険労務士/専門社会調査士

    【研究領域・テーマ】
    地域産業政策/中小企業/ダイバーシティ・マネジメント

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