AIさまに褒められる  -美術品専用車の巻-

今年の本学博物館特別展を担当した。特別展は毎年の、本山(東本願寺)報恩講の時期に合わせて開催している。特別展以外の展覧会は本学の博物館と図書館の所蔵品を展示するが、特別展だけは、その年のテーマにかなう、他所のご所蔵のものを拝借して開催し、図録も制作する。

開催前には拝借先に赴き、厳重な確認を経て梱包し、作品とともに輸送業者の美術品専用車に乗って博物館に帰着する。また、展示が終わると所蔵者のもとへ、美術品専用車に乗って伺い返却する。美術品専用車は、積載部が温湿度管理ができる、エアサスペンション車。つまり荷台のボックスにエアコンの付いた、振動の少ないつくりになっている。

今回も、近畿のほか東京、敦賀、鳥取、そして北海道の小樽など、拝借と返納に回って来た。美術品専用車には、美術品の輸送に長けた運転手さん、扱いに長けた作業員さんと私が同乗。袖擦り合うも多少の縁と、車中は楽しくおしゃべりもする。久しぶりの美術品専用車。しかし今回は少し気になることがあった。

交差点を通過するごとに、女声の機械音が流れる。「適切な交差点通過でした。これからも安全運転を心掛けましょう」文字でこう書くと、運転手さんを励ましている音声のように思われるかもしれないが、交差点ごとの機械音は耳障りで、何より機械に評価されている感じが否めない。大袈裟だが、人類の未来にここからも恐怖を感じてしまう。機械に支配され、〇か×かしかない、つまりは臨機応変、△などといった言葉や記号はこの世から消え去ってしまうのではないだろうか。

一日の仕事が終わりトラックを降りる時は、「お疲れ様」とか「明日も頑張ろう」とねぎらう機械音は無かった。いや、あればなおさら震え上がったかもしれない。

PROFILEプロフィール

  • 國賀 由美子 教授

    【専門分野】
    日本絵画史

    【研究領域・テーマ】
    絵巻物/祭礼図/行事絵/近世絵画(特に近江の画人)/近代日本画