国際化時代の共同研究奇譚

最近、私の身に起きた少し不思議な話をしようと思う。昨年末の、とある国際学会から始まるエピソードである。自分の報告を終え、懇親会でリラックスしていたとき、日本人の知人が声をかけてきた。なんでも紹介したい人物がいるという。その彼はカナダ人であり、デジタルやAIに関心が強いらしいとのこと。知人もその場で知り合ったばかりだったようで、私に彼を紹介するとすぐに別なところへ行ってしまった。彼は、私が取り組んでいる、エンジニアなどの市民有志との、主に経済的に困窮している方を対象とした支援制度検索アプリ開発やほかのプロジェクトの話を興味深そうに聞いてきたが、その場では特段何かを約束することもなく別れた。

次の朝、ある分科会で彼と再会し、また話をした。デジタル時代における、市民がリスクを取って開発した成果を場合によっては政府が拡大させるという役割分担や、日本やカナダのデジタルに関する官民関係の現状について、1時間半を超えて話をしただろうか。彼は「帰国したらメールを送るよ」と言い、本当に送ってきた。私だけを宛先としたメールではなかったが、返信をしたのは私だけだった。

実は、その若手研究者は極めて好奇心旺盛で生産的な人間だった。そこから2人で研究計画についてアイデアを出し合い、あっという間にいろいろな研究者が加わった。彼はこの夏に日本にも来たので、私は彼をプロジェクトメンバーやいろいろな研究者に引き合わせ、京都を案内した。道中、さらに新しいアイデアが生まれた。国際共同研究プロジェクトの誕生である。

この話から何か教訓が得られるだろうか。本当のところ、現在進行形のことなのでまだよくわからない。ただ、これだけは言えるだろう。オンライン会議やメールで国境を軽々と超えてつながれる国際化時代にはいろいろなことが起こる。日々準備をして、心をオープンに保ち、あらゆる出来事を楽しむことはきっと大切だ。ある日、あなたにも奇妙な偶然が起こるかもしれないのである。

PROFILEプロフィール

  • 白取 耕一郎 講師

    【専門分野】
    行政学/地方自治論

    【研究領域・テーマ】
    公共政策/協働/社会福祉