大変な2週間後

祇園祭が4年ぶりに通常開催された。特に宵山は盛況であったようで、多くの人がつめかけ活気にあふれる様子が報道されていた。一方で、2週間後にはコロナウイルスの感染が拡大し、京都は大変な状況になっているなどと憂慮する声もあった。

2週間後、特に大変な状況にはなっていなかった。ちょうど前期試験が終わる時期だったが、ゼミ生と久しぶりに夕食を伴う懇親会を行うことができた。この頃になると、2週間後を心配していた人達の関心は、直前に行われ103万人が集まった東京・隅田川の花火大会に移っていたようであり、2週間後の東京を心配していた。

新型コロナウイルスが問題になって以来、2週間後に大変な状況になるという話をよく耳にする。2020年の春などは、2週間後に東京はニューヨークのようになると、実際に大変な状況になっていたアメリカを引き合いに出して、かなりの騒ぎになっていたように記憶する。

多くの人は1週間を生活の単位にして過ごしていると思う。すると、先週のことは比較的よく覚えていても、先々週のことになると少し記憶が曖昧になっていたりする。やたらと2週間後と言うのは、ウイルスの性質もあるだろうが、2週間たてば、ほとぼりが冷めてきて、言いっぱなしでも大丈夫だと思っているせいでもあるのではないか。本当に大変な状況になると考えていたのであれば、2週間後、結果がどうであれ検証する必要があると思うのだが、あまりしているようには見えない。そんなことを繰り返していれば、段々と信用を失い、警告を発しているつもりでも、誰も聞かなくなるだろう。

祇園祭宵山の1か月後、やはり京都の夏の風物詩である五山の送り火が行われ、鴨川の河川敷などには多くの人が集まっていた。その約2週間後、このコラムは公開予定だ。京都の町が大変な状況になっていないことを心から願っている。

PROFILEプロフィール

  • 松浦 典弘 教授

    【専門分野】
    東洋史

    【研究領域・テーマ】
    中国史/仏教/石刻史料