教える、教わる

コミュニティデザイン学科では、地域政策学コースと情報メディアコースにおいて「プロジェクト研究実践」という授業を設定しており、学生はいずれかのプロジェクトに参加することになっている。私は今年度から「デジタルサポートプロジェクト」と題したプロジェクトに関わっている。これは主に、高齢者を対象にスマートフォンを中心とした情報技術の指導を学生が行うプロジェクトだ。

プロジェクトを始めるにあたり、学生がちゃんと指導を行えるか、受講者に対して失礼なことがないかなど、心配は尽きなかったのだが、始まってみれば、みな、十二分な対応を行っていた。見ていると、指導を行う学生も指導を受ける受講者も、いきいきした表情をしている。
このような指導は、子から親に教えるなど身内の間で行う場合、言葉にトゲが生じるなどして指導がスムーズにできないことが少なくない。逆に、このプロジェクトのように基本的に「他人」である学生からの指導となると、素直に指導内容を受け止めやすい。指導する側の学生も、相手が身内でないため、同じことを繰り返し訊かれるようなことがあっても冷静な対応ができる。

指導を受ける受講者は、できなかったことができるようになる、知らなかった知識を得る、といった喜びに加え世代の離れた学生と交流するという刺激がある。指導する学生もやはり刺激を得るとともに、自分が相手のためになっていることを実感している。考えてみると、指導の場においては、知識や技術が一方的に与えられるのではなく、受講者から指導者に対して与えられるものが確実に存在する。つまり、受講者が来てくれたからこそ、指導者は自分の行為の価値を実感することができる。

知識であれ物であれ、それを伝える、与えるということは決して一方的な関係ではない、ということを実感できるプロジェクトとして進めることができればと思う。

PROFILEプロフィール

  • 酒井 恵光 教授

    【専門分野】
    計算機科学(グラフィカルユーザインターフェイス)

    【研究領域・テーマ】
    ユーザインターフェイス/情報の可視化/インタラクティブ・システム