はじまりの季節に

新年度の大学生活が、いよいよスタートを切りました。

この学びのはじまりの季節に「人を育てる礎(いしずえ)」について、みなさんと一緒に考えてみたいと思います。

少し前のことになりますが、昨年メジャーリーグで大活躍した大谷翔平選手のドキュメンタリーを見ました。その番組では、大谷選手に野球を最初に教えた父親と大谷少年が交換していた「野球ノート」のことが取りあげられていました。そのノートに父親が強調して書いていた三つのポイントがあります。

「一生けんめい、元気に声を出す/一生けんめい、キャッチボールをする/一生けんめい、走る」この三つは野球少年にとって特別なことではないでしょうが、父親はこれを大谷選手に徹底して伝えていました。

このことを通して父が子に教えたかったものは何だったのでしょうか。

そのドキュメンタリーで大谷選手の父親は「ヒットをうちなさい、エラーするな、ファインプレーをしなさい」ということではなく、野球に対する「姿勢そのもの」を大切にする選手になってほしいという内容を語っていました。確かに“結果”はその人の“力”を示すのに説得力をもちます。大谷選手が昨年メジャーリーグで大活躍したという“結果”は私たちの注意を彼に向けさせます。けれど、彼の父は、彼を単なる試合やプレーの“結果”によって評価しなかった。そうではなく、彼が野球とどのように向き合っているかという点で、叱りもし、褒めもした。このような関わりを通して「自らを育てる礎」を少年大谷翔平は身につけているように私には感じられました。

どのような状況の中でも、問い学び続ける自身の姿勢をたもち、自らを育てていくこと、これこそ大谷選手が父親からもらった“贈り物”だったのでしょう。学びのはじまりの季節に、「自身を育てる礎」となるものを意識して、今年一年の大学生活を具体的に考える、そんな時間をつくってみてはどうでしょうか。

 

PROFILEプロフィール

  • 藤元 雅文 准教授

    【専門分野】
    真宗学

    【研究領域・テーマ】
    親鸞の生涯と思想/教行信証/愚禿鈔/法然の思想