空の飛び方 ——文化の総体としての仏教——

 空を飛んでいる人間はどのような姿勢だろうか。多くの人は、両手を翼のように拡げてバランスを取り、体軸を横にして腰と脚を肩の位置まで引き上げた姿勢を思い浮かべるだろう。これは、地上では取ることが難しい姿勢である。また、孫悟空のように雲に乗る姿を思い浮かべる人もいるだろう。この場合、地上と違いがない姿勢で描かれる。いずれも、その発生した地域の文化を表していよう。
 
ところで、日本の仏教寺院では、奇妙な姿勢で空を飛ぶ人間の姿がしばしば描かれる。天女像である。上半身を立てて地上と変わらない姿勢をとりながら、腰から脚にかけてはほぼ水平になっている。現実の人間がこのような姿勢をとることは、骨格の上からも難しい。これは、先述した2つの流れが混交したものであろう。
 
仏教は、単なる思想の一分野ではなく、文化や文明、学問の総体であった。建築や工芸など、現在では仏教と無関係に思われがちな分野のものも、「最先端のもの=仏教」として導入されたのである。現在でも、仏教寺院には、実際には眼にできなかった動植物や想像上のものが彫刻や絵画として表現されている。これは、それが最先端の文化だと捉えられていたからである。
 
現在でも、仏教寺院は総合美術館のようである。そこに見られる複雑なものごとを通して、多くの思いや願いを読み取ることができよう。
東本願寺御影堂の欄間に見られる天女
東本願寺御影堂の欄間に見られる天女

PROFILEプロフィール

  • 釆睪 晃 教授

    【専門分野】
    仏教学/人文情報学

    【研究領域・テーマ】
    中国仏教/情報文化/文化伝播

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