テレビの字幕放送

子どものころからテレビが好きで、家にいて起きているときはたいていテレビをつけている。食器を洗ったり、何かしながら見ているとき、あるいは、ドラマのセリフなどをしっかり聞き取りたいときなどには、字幕をオンにしていることもよくあるのだが、最近気づいたのは、CMにも字幕が付いているものが出てきたことである。

テレビの字幕放送が始まったのは1983年で、当時は文字多重放送と呼ばれていた。最高視聴率62.9パーセントを記録したNHKの連続テレビ小説『おしん』での実験放送が最初らしい。視聴できるエリアは東京と大阪に限られていた。

アナログ放送の時代は、字幕放送を見るためには専用の機器が必要だったが、2003年にスタートした地上デジタル放送に対応するテレビでは、字幕のオン・オフを選択できる機能が標準となった。その後、情報のバリアフリー化の必要性、有効性に対する理解が進む中で、字幕の付く番組は増えていき、ニュースやスポーツ中継など生放送の番組にも字幕が付くようになっていったが、字幕付きのCMについては、広告主企業とテレビ局側双方の事情でなかなか進まなかったようである。2010年にパナソニックが初めて字幕付きCMを放送したが、最初は関東エリアのみ、1社提供番組のみでのスタートであった。2014年に字幕付きCM普及推進協議会が設立され、2015年から複数提供番組でも放送可能となり、2021年4月に関西、東海エリアが加わった。そして同年10月にようやくエリアが全国に拡大した。

字幕の作成にはいくつかの方式があり、収録番組では校正も行われるようだが、大変な手間であろうことは想像に難くない。ある番組で「エドガー・アラン・ポー」が「江戸川乱歩」になっていたことがあったが、こういうミスがある程度起こることはしょうがない。ただ、生放送でもないのに字幕が遅れて出る番組には少々イライラさせられる。
 

PROFILEプロフィール

  • 浅若 裕彦 教授

    【専門分野】
    英文学/文体論

    【研究領域・テーマ】
    英米文学/文体論/話法