BEV

ホンダは2040年までに世界で販売する新車を、すべて電気自動車と燃料電池自動車にするという目標を発表した。ハイブリッド車も廃止するという。ホンダがエンジン製造をやめるというのはショッキングなニュースだが、ずいぶん思い切ったことをするなと感心もする。本当に実現できるのだろうかと疑念を表明する人も多いが、欧米諸国で進む脱ガソリンの動きを見ると、日本の自動車メーカーもそちらの方向に向かわざるをえないことは明らかで、化石燃料を燃やして走る車は、完全に消えることはなくても、アナログレコードやフィルムカメラのような存在になっていきそうである。
 
水素を燃料とする燃料電池自動車は、車自体の性能は優れていても、開発に注力しているメーカーが少ないので、主流となっていくのはBEV、すなわち純粋にバッテリーの電力のみで走行する電気自動車であろう。
 
電気自動車は決して新しいものではない。自動車の黎明期には、ガソリン車や蒸気自動車と覇権を争っていて、1910年代には、アメリカの自動車販売数の約40パーセントを電気自動車が占めていたという。その後ガソリンスタンドなどのインフラ整備も含めた総合的性能でガソリン車に太刀打ちできなくなり、姿を消していたのである。
 
BEVが真にエコな車であるかは議論の余地があるようだが、環境に与える影響という観点を除くと、現在のBEVはまだ選ばれるべき存在になりえていない。自宅ガレージでいつでも充電できる環境があり、一回に短い距離しか乗らない人にとっては、悪い選択肢ではないかもしれないが、長距離を営業で回るというような使い方をする人にとっては、現状のBEVの性能はガソリン車やディーゼル車に比べればお話にならない段階である。航続距離の延長、充電時間の短縮、インフラ整備が十分に果たされるには、後どれくらいかかるだろうか。

PROFILEプロフィール

  • 浅若 裕彦 教授

    【専門分野】
    英文学/文体論

    【研究領域・テーマ】
    英米文学/文体論/話法