2023年6月 御命日勤行・講話 厳修

6月28日(水)10時40分より、6月の「親鸞聖人御命日勤行」を本学講堂において厳修しました。
勤行は、学長の調声のもと『正信偈』を唱和しました。その後、学生2名が感話を、平野寿則教授が講話を行いました。

「感話」及び「講話」で話された概要を、以下のとおりご紹介します。

学生による感話の概要

  • 学生による感話の様子

    テーマ:大谷大学での学び

    授業でのフィールドワークを通し、「他者を理解する想像力とは何か」をゼミで話し合ったとき、理解するための想像力とは、同じ立場に立つことではなく、同じ目線で物事を考える想像力ではないかというのが自分たちの理解でした。しかし、社会生活の中で、少数者がどのように生きるべきかを考えるのではなく、多数者が陥りがちな無意識の態度の問題があります。無意識に多数者が陥りがちな態度とは、人は互いに同じ立場に立っていると思い込んでいることです。そして、多数者自身が上から目線を作り出し、一方的な基準から「受け入れる」、「認める」という、認められる努力を少数者に対して押し付けていることになります。大事なことは互いに立場が異なることを前提とし、目線を同じくすることであり、それが私たちの文化創造ではないでしょうか。

  • 学生による感話の様子

    テーマ:大谷大学での学び

    私は寺院出身ではありませんが、母方の実家がお寺ということもあり、「住職になってみようかな」という軽い気持ちから大谷大学に入学しました。大学生活では、コロナ禍で在宅時間が増えたこともあり、韓国に興味を持ちました。ドラマ鑑賞をしたり、選択授業では韓国語を選んだり、韓国の文化や言語について学びました。現在では韓国の仏教について学んでおり、卒業論文を元暁という韓国の仏教者を題材に書こうとしています。元暁は俗人の姿で活動したり、僧侶でありながら子どもをもうけたりと、非僧非俗を唱えた親鸞との共通点があるように思いました。振り返ると、住職になるために大谷大学に入学したこと、たまたま興味を持った韓国の文化や言語などを通し、自分の世界が一気に広がりました。そして多くのことが縁となってつながっていると実感しています。

本学教員による講話の概要

『くずし字解読辞典』と私

文学部歴史学科 平野寿則 教授

平野寿則教授による講話の様子
平野寿則教授による講話の様子

くずし字を読んだり、勉強したりする時に用いられる辞典の一つに、『くずし字解読辞典』がある。この辞典は、くずし字(草書体)を起筆順に配列し、本来の文字(楷書体)を知らせようとするものである。実際に使ってみると、普通の辞典とは勝手が違い、思うように引くことができない。初心者にとっては、なかなか厄介な辞典である。それでもくずし字を学んでほしいのは、まだ埋もれたままになっている史料が膨大にあるからであると述べられました。
近年、くずし字解読を支援するデジタル技術に注目が集まっている。クラウドソーシング型システムやAI画像認識システム、AI-OCR搭載のオンライン解読支援システムなど様々である。デジタル技術が進化して、さらに簡便にくずし字解読を支援してくれるようになれば、専門の研究者だけでなく、家族史・自分史といった身の回りの「小さな歴史」にもっと注目が集まり、そこから「大きな歴史」が問い直されるかもしれないとご教示いただきました。また、自然科学の分野においても、膨大な過去の記録がデータとして活用されると述べられました。
最後に、くずし字は私たちの生の様式そのものであり、そこには未だ記述されていない「歴史」がある。その「歴史」に対置することが歴史学であるから、結局、この「私」に関わる問題なのである。「くずし字」を解読することは、私を歴史化することに他ならない、と講話を締めくくられました。