大谷大学文藝コンテスト

【にんげん部門】受賞作品

高校生の部

最優秀賞

恩返し
和田 樹佳/昭和学園高等学校 第2学年

講評
ご自分の小学生時の被災経験から、当時の家に帰れない日々、学校にも行けず友達にも会えない状況を伝えてくれています。そしてようやく学校には通えないが学童に行けるようになったこと。そしてそこでの子どもたちのストレスフルな状況からくる喧嘩の絶えない日々。本当に辛かったと思います。そして学童最終日での先生の「みんなの笑顔が見れてよかった」という言葉との出会いから、自分の周囲の友達や先生に向けた激しい感情に気付かれていきます。自分がなんと多くの人々に支えられ、今こうしていられるということに。多くのボランティアの方々が、危険な被災地域に入り、自分を支えてくれたことに出会っていかれます。その出会いから、ボランティアの存在の大きさ、大切な意義に気付かれていきます。そして何よりも人の存在の温かさに触れること。その温かさが著者を大きく育てていることを伝えてくれる作品です。
(仏教教育センター)

優秀賞

自分らしく生きる
筒井 叶女/飯田女子高等学校 第2学年

講評
「自分」という存在の不思議さについて考えさせられる作品です。筆者はこれまで、周囲に合わせてばかりの生き方をしてきたので「自分らしく生きる」という言葉が好きになれないと述べます。その一方で、ある言葉との出会いをきっかけに、少しだけありのままの自分を認め自分らしく生きることができるようになったとも記しています。自分を変に卑下することなく肯定的に受け止めることは、一面ではとても大切なことでしょう。しかし現在の自分を丸ごと全肯定して開き直ってしまっては、人として日々成長を重ねていくことが困難になるように思います。真の意味で「自分を大切にする」とはどのようなことなのかについて、引き続き考え続けていってもらいたいです。
(仏教教育センター)
主眼という霧
東野 桃子/京都光華高等学校 第3学年

講評
「主観という霧」という題名に示されているように、人は往々にして自分の主観、あるいは思い込み、都合などに引きずられた状態でものごとに接してしまう。作者は、人からは嫌われがちな虫を、逆に好きだという視点でものごとを見ている。そして、虫に対する他の人間の態度や、虫好きな自分に対する他の人間の態度についての体験を淡々と語り、「人間という生き物が面白い」という思いに至っている。人間という存在について、視点を変えて見ることの大事さ、おもしろさをうまく伝えてくれている。
(仏教教育センター)

PHPエッセイ賞

私が大切にしていること
木下 千尋/伊那西高等学校 第2学年

講評
自分が成長できているか確かめるために大切なのは、他人との比較より、昨日の自分との比較。
他人と比べ、他人からの評価を気にしすぎてピアノが楽しめなくなっていた筆者が、昔の自身が演奏する映像を見て、確かに上達・成長していると実感した体験をストレートに綴っている。難しい曲を弾きこなす年下奏者への、尊敬と嫉妬・焦りで揺れる複雑な感情は、共感できる人が多いのではないだろうか。
筆者が付けていたタイトルは、執筆のテーマを表したもの。内容が伝わるようタイトルをもう一工夫すれば、より作品の魅力が高まる。
(株式会社PHP研究所 PHP制作局部長/上岡 祐樹)

中外日報社賞

ありがとう先生
成田 来琉未/函館大谷高等学校 第2学年

講評
「新しい環境にまだ馴染めず、うつむいていたあなたの心を開き、目の前に明るい光を注いでくれた担任の先生の行動に胸が熱くなりました。
お母さん、先生、そして学校の友だち、みんなが温かい光を浴びて前へ進むことができた。何よりも、あなた自身が成長できた。
厳しさは人を鍛えると言いますが、温かい愛情は人を大きく育てることを教えてくれます。あなたが学んだ経験は、これから先も人生を照らす灯火となるでしょう。」
(株式会社中外日報社 取締役会長/形山 俊彦)

佳作賞

大谷(親鸞聖人)からあなたが願われていること
赤松 優哉/大谷高等学校(京都) 第3学年

成長していると気づく
大澤 珠明/伊那西高等学校 第3学年

総評
閉塞した生きづらい世の中で、人間社会と人間のあるべきすがたを考えた作品である。他者と比較し自己嫌悪におちいる「私」を見つめ直し、同調圧力のなかいつのまにか視野が狭くなっていく「私」を客観的に観ることは大切である。そうした営みは「私」を私自身が作っている束縛から解放させてくれる。こころの自由を取り戻せれば、自分の間違えも笑い飛ばすことができるし、他者の間違えにも寛容的になることができる。私たちは気をつけていても他者に迷惑をかけてしまう存在であり、たくさん間違えもすれば、恥ずかしいことも平気でしてしまう。また意図せずとも他者を傷けることさえある。そのような「私」を受け入れることができれば、そのような他者も認めることができるのではないか。「焦る」必要もなければ、「失敗しないように」とビクビクすることもない。二つの作品からたくましさと、おおらかなメッセージが感じられた。
(仏教教育センター)

中学生の部

最優秀賞

大谷(親鸞聖人)からあなたが願われていること
今井 皐/大谷中学校(京都) 第3学年

講評
ご自身の体験から、人を助けることの大切さを学ばれたのですね。私たちは日頃から、互いに助け合うことの大切さを教えられていますが、あなた自身「私ももし道でしんどそうにしている人がいても声をかけられないかもしれない」と述べておられるように、私たちは誰かを助けるための一歩を踏み出す勇気はなかなか出てきません。
今回の体験があなたに一歩を踏み出す勇気「誰かを助けられるような人間になりたいと強く思った」を起こさせたのですね。これからも互いに助け合い、支え合いながら生きていることを感じられる生き方を大切にして欲しいと思います。
(仏教教育センター)

優秀賞

小さな命
金澤 神音/札幌大谷中学校 第2学年

講評
命の尊厳をテーマとして、アマガエルという「小さな命」から「大きな幸せ」をもらったことを克明に描いた作品です。特にアマガエルのぴょん子に関する描写は、まるで人間のことを記しているかのように具体的に記されています。それだけ筆者がこの小さな命を家族として大切にしていた様子がうかがえます。家族同様に大切な存在であるからこそ、最期まで命を全うしたぴょん子の姿に、筆者は命の尊さや命を預かることの責任の重さを考えました。タイトルにあえて「小さな」という表現を用いながら、逆に筆者にとって小さな命ではなかったことを示すような筆致で描かれています。
(仏教教育センター)
私のお父さん
万徳 彩音/札幌大谷中学校 第3学年

講評
大好きで尊敬するお父さんと一緒に暮らす筆者が、中学生になると、時には反抗したり喧嘩したりしながら過ごし、今では妹とお父さんの喧嘩の仲裁もするなど、家族の関係やその中での筆者の気持ちが見事に描かれている作品です。親への反抗は、中学生らしい青春の一コマですが、そうした日常の中でもお父さんのことが大好きであるという気持ちが一貫している様子がよく分かります。一番身近で大好きな存在だからこそ、感謝の気持ちをなかなか伝えられないということはよくあります。でももしこれをお父さんが読んでくれたら、お父さんはきっと喜んでくれると思いますよ。
(仏教教育センター)

文化時報社賞

お母さんと仲直りした日
吉川 碧/札幌大谷中学校 第2学年

講評
自分の言動と心の動きを素直につづっていて、とても好感が持てました。表現力も豊かで、リビングでの情景が目に浮かびました。
人間関係に悩みは付き物ですが、家族に限らず、どうすれば喧嘩をしないで済むのでしょうか。この作品から読み取れたのは、自分から謝ること、感謝の気持ちを伝えること、そしてお母さんのように相手を許すことなのかもしれません。
不思議なことに、自分の非を認めて素直に謝ることは、大人になるほどできにくくなります。「お母さんと仲直りした日」のことを、これからもどうか忘れないでいてください。
(株式会社文化時報社 代表取締役/小野木 康雄)

佳作賞

人生という意味
永井 純海/札幌大谷中学校 第3学年

講評
この作品は、「人生は不思議だ。」と書き出され、中学生である著者から見た「考えれば考えるほどよく分からない」人生の多様なすがたが記されます。そのうえで、今の人生に対する著者の率直な思いがつづられていきます。文章の後半では「不思議」な人生ではあっても、「今の私にわかるのは、人生は一度きりということ」と述べます。このポジティブにもネガティブにもなりうる言葉について、著者は「だから、今、生きている毎日を大切に過ごそう」と、非常に前向きな言葉をつづけます。作品の結びには「人生は不思議だ。だけど、何だか楽しそう。」というこの作品を象徴する表現が登場します。「不思議さ」が「楽しさ」につながっているという著者の感性が、あたたかさをじんわりと感じさせるこの作品を生み出しているのでしょう。
(仏教教育センター)