大谷大学文藝コンテスト

2015年度 大谷大学文藝コンテスト/受賞作品

2015年度 第3回大谷大学文藝コンテストにおきましては、全国からエッセイ部門489作品、小説部門162作品が寄せられました。多数のご応募ありがとうございました。
【高大連携推進室】 

【エッセイ部門】受賞作品

最優秀賞

該当なし

優秀賞

何か手伝えることはありますか 富谷 野乃

獨協埼玉中学・高等学校
第1学年
突然の良いところ発見 蛾編 星野 学

静岡県立焼津水産高等学校
第3学年
駄洒落の文化 林 良樹

東山中学・高等学校
第2学年
 

大谷文芸部賞

「腹減った」 大橋 蒼以

静岡県立焼津水産高等学校
第3学年
 

奨励賞

待つ 桑原 夏子

学習院女子中・高等科
第1学年
器用貧乏 棚橋 亜以

学習院女子中・高等科
第1学年
発想の転換で世界初の発見を! 中屋 悠資

関西学院高等部
第2学年
自宅滞在記 荒木 花清

神戸市立兵庫商業高等学校
第1学年
三人寄れば 小西 慧悟

奈良県立西和清陵高等学校
第2学年
小川 夕月

山口県立光丘高等学校
第3学年
 

【小説部門】受賞作品

最優秀賞

水炊き列車 山田 ひかり

筑紫女学園中学校・高等学校
第3学年

優秀賞

不変の深海 齊藤 里緒

渋谷教育学園幕張中学校・高等学校
第1学年
がめくり込んで、 吉原 菜桜

筑紫女学園中学校・高等学校
第2学年
 

大谷文芸部賞

ニアリーイコール 桐生 亜依

済美高等学校
第2学年
 

奨励賞

サマドラの友人たち 刀禰 碧

渋谷教育学園幕張中学校・高等学校
第1学年
あなたの背を追い越しても 高崎 智子

富山県立南砺福野高等学校
第2学年
微かな産声 廣田 珠々奈

私立近江兄弟社高等学校
第3学年
 

【エッセイ部門】講評

株式会社PHP研究所 常務取締役
文藝塾セミナー講師
安藤 卓

【優秀賞】何か手伝えることはありますか

 困っている人に手を差し伸べるのは大人でも勇気のいる行為である。ましてや高校生にとっては恥ずかしさが先に立って、なかなか実行できないだろう。それでも誰かの役に立ちたいという思いを実践に移していく過程を、自らの心の変化を主軸にして描いた読み応えのある作品だった。文体にキレがあり、タイトルの意味を最後に明かす構成力も見事である。誤字脱字を見直すとともに、改行や句点のつけ方を工夫すると、さらに読みやすい文章になるので、文章力に磨きをかけてほしい。

【優秀賞】突然の良いところ発見 蛾編

 ふとしたきっかけで大嫌いだった蛾に興味を持ちはじめ、蛾の顔が意外とかわいいとか、蝶と同じくらい美しい蛾がいることを知るなど、蛾に対する嫌悪感が薄らいでいく心情をうまく描いた作品である。 美醜に対する表現力は巧みであり、徐々に蛾に親近感を持っていく展開も読者を引きずり込む力がある。ただ、今回はサイト検索のみで文章が完結してしまっているので、違う視点から興味を持つ方向に発展させれば、もっと奥行きのある作品になったと思う。

【優秀賞】駄洒落の文化

 駄洒落もまた日本語の文化であると信じ、新しい駄洒落の創作に苦心し、できた駄洒落を友だちに披露し評価してもらう日々を綴っている。こんな高校生もいるのだという新鮮さと笑いを誘う作品である。駄洒落のつくり方から使い方までわかりやすく説明しつつ、駄洒落をこよなく愛する気持ちを伝える文章力は高く評価できる。惜しむらくは、審査員をうならせる駄洒落がなかったことと、海外の人にどうやって理解させるかの実例ないしはアイデアがほしかった。

【奨励賞について】

 奨励賞については、優秀賞に劣らぬいい作品が多かった。ただ、句読点が抜けていたり、主語が混在していたり(私と僕など)、改行が少なかったり、読む側への説得力が欠けていたりなど、文章の体裁や完成度の点で審査員の評価が分かれてしまった。一度書いただけで応募するのではなく、何度も推敲を重ねれば高い評価を受けるだろう作品ばかりなので、今後に期待したい。

【小説部門】講評

詩人・文藝塾セミナー講師
萩原 健次郎

【最優秀賞】水炊き列車

 「水炊き列車」という題名から惹かれた。喩えとしても秀逸なのだが、調べてみると実際にそう呼ばれた列車便があったと言う。構想と構図が緻密にからんで速度感のある文体によく昇華されている。機関車のしくみなどもよく調べられている。人物設定や描写、時代背景は、唐突なようでいて、不自然ではない。自らの小説としての着地点が明確であるからだろう、リアルな既視感をともなって楽しく読ませる。読後、同じ作者の作品をもっと読んでみたいと思った。それだけの力がある。

【優秀賞】不変の深海

 生きものがまったく入っていない水族館の水槽が、好きだと言う。フラジャイル、こわれものとしての青春という心身の器を想像してしまうと作者の意図と違うかもしれないが、そう読めた。生きることの心の微細な動き、繊細で傷つきやすい生の断面。不変であれと願いつつも、次第に大人という次のステージに変化していく。「海風って嫌い。海に息を吹きかけられているみたいで、気持ち悪い。」と主人公はつぶやく。小説としての構えが幾分粗いのだが、それがかえって、心身の瞬きをあざやかに見せている。

【優秀賞】がめくり込んで、

 「どうして、ひとをころしちゃだめなんだろ」。そうつぶやかれた後の行は、「じわり、と口に含んだ鶏肉から、さっきと違う妙に油っぽい醤油の味が染みる。」と続く。難しい倫理的難問を、郷土料理の食感とからめるといった即妙が、文体のリズムにも形成されて全篇を通じ息づいている。会話のテンポ、シーンチェンジのスムーズさ、軽妙さが心地よく感じられる。ただ、この機知や軽さに幾分全体が流されているようにも思った。結びの部分「俺、かな」の後の3行だけでは、この作品一篇が屹立してこない。

【大谷文芸部賞】講評

大谷文芸部(学生サークル) 

【エッセイ部門】「腹減った」

 ある意味正直すぎる文章であり、とても読みやすかったです。また、大学生の私たちも「こんなこともあったなぁ」と思える内容でした。
 しかし、ただ事柄を羅列しているようにもみえるという意見や、オチにあたる部分が弱く言いたいことが言えていないのではと感じてしまうという意見も出ていました。エッセイとして、文のリズムを自分の中で考えながらも、もう少し内容を深くしたほうがより良い文章が書けるのではないでしょうか。これからも是非、書き続けてください。

【小説部門】ニアリーイコール

 機械屋という名前から自分の世界観に持っていくやり方など、入り方がうまい作品でした。設定も面白く、登場人物が無理やり動かされている感もないため、読み手がすんなりと物語に入ることが出来る作品だと思います。
 部員の一人からは最後のシーンの情景が美しくそしてあまりにも悲しい、作品中の機械屋の行動がとても心に残ったという意見がありました。それほど読み手を魅了することが出来る力を持つ作品であったと思います。