文学部社会学科(2018年4月募集停止)を2002年度に卒業後、現在は弁護士としてご活躍されている小南あかりさんに、現在の仕事をめざしたきっかけや大谷大学で学んだこと等を語っていただきました。
※このページに掲載されている内容は、取材当時(2023年7月)のものです。

社会環境の影響を受けて犯罪が生まれる場合があることを知り、弁護士の道へ

大学卒業後、別の大学の法科大学院を修了し、現在は弁護士として活動しています。
弁護士をめざしたきっかけのひとつには、大学の授業で社会病理学について学んだことがあります。社会の環境によって罪を犯さざるをえない人々が生み出されることや、再犯を繰り返す人が沢山いることを学び、犯罪者を処罰するだけでは問題解決にはならないということが分かりました。就職を考える時期にもその問題意識が強く残っていたので、将来はその問題意識と向き合う仕事に就きたいと思うようになりました。その中でも弁護士を志望したのは、弁護士は刑事弁護人として罪を犯した人々の唯一の味方となり、最も近い距離でコミュニケーションをとることができる職業だと思ったからでした。自分が刑事弁護人として関わった方々が将来再犯を犯すことがないようにサポートしたい、それが将来自分がやるべきことなんだと決意をして、まずは司法試験を受験することを決めました。法曹の道に進むことは容易ではなく、大学を卒業してから約7年の歳月を要しましたが、周りの方々の協力もあり司法試験に合格することができました。

やりがいを感じる刑事弁護活動

弁護士としてこれまで民事事件も多く担当してきましたが、やはり弁護士を志望した理由でもある刑事弁護活動にやりがいを感じています。検察官や裁判官と異なり、弁護士は罪を犯して逮捕・勾留されてしまった方と面会し、弁護を通じてその方を守る活動ができる唯一無二の職業だからです。

これまでの経験から、罪を犯してしまう人には、生まれ育った環境や現在置かれている状況等、本人以外の事情に強く影響を受けている方が多いように見受けられます。窃盗により逮捕され、3回目の再犯だった方の弁護を担当した時のことです。その方の生い立ちから現在まで家族関係や職歴、人間関係等についてお話を聞くと、これまで生きてきた環境の影響を強く受けており、本人が窃盗をしないと生活ができないと思い込んでいて他の生き方の選択肢を考えることができないことが分かりました。再犯ということもあり裁判では懲役刑を免れない状況でしたので、出所後に罪を犯さないためにどう生きていくかを一緒に考えました。その方は「こんなに一緒に将来のことを考えてくれたのは初めてで考え方が変わりました」、「出所後は先生のために真面目に働きます」と言って、刑務所からも定期的に手紙を送ってくださっています。少なくとも、今後再犯を犯さないと心から決意をして、これまでとは異なる生き方を考え始めた様子を見ることができたときに、弁護士として自分自身が実現したかったことに一歩近づけたと感じました。

部活動とアルバイトに没頭した学生生活

高校時代は器械体操部の活動に打ち込んでおり、大谷大学への進学は京都での大学生活に憧れがあったことがきっかけです。
大学生時代は、部活動とアルバイトに没頭していたことを覚えています。部活動は、アメリカ民謡研究部に所属していました。入学して数か月経った頃に、同じクラスの友人に「バンドメンバーが足りないから入らないか」と誘われたことがきっかけです。活動に熱中し、楽器を持って部室に入り浸り、カフェバーなどでライブをしていました。卒業から20年がたち、当時のバンドメンバーは福岡、香川、東京、京都とバラバラに住んでいますが、今でもLINEでやり取りをしたり京都に集合して昔話をするなど、友人関係は続いています。アルバイトは、同じクラスの別の友人の紹介で大学近隣のフルーツパーラーで卒業まで働いていました。常連さんに大谷大学の関係者や卒業生が多く、幅広い年代の方と接する機会となりました。

学生時代に出会うことに、無駄なものはない

大谷大学に入学して学んだことが、現在の職業である弁護士を志望したきっかけになりました。大学入学前は、弁護士になろうと思ったことはありませんでしたし、将来は何をやりたいのか、どんな職業につきたいのか、ということについてイメージすら湧いていませんでした。当時は、やりたいことが何も見つかっておらず、毎日楽しく過ごせればよいと思っているだけの学生でしたが、何がきっかけで目指したい道が見つかるかは本当に分からないものです。
また、大学では全国から集まった同級生や先輩後輩と友人関係をつくることができ、学生生活が充実したものとなりました。同級生との交流だけでなく、アルバイトや部活動を通じて幅広い年代の方々と接する機会が多かったことも、当時の私の視野を広げる大きな要素となりました。今になって振り返ると、大谷大学に入学したことにはとても大きな意味があったと思います。

その一方で、学生時代にもっと講義を真剣に聞いてきちんと学んでおけばよかったと少し後悔しています。様々な知識に触れることができる貴重な機会だったと改めて感じていますので、在学生の皆さんは積極的に学びを深めていってください。また、寺院出身の方以外でも仏教や浄土真宗を学ぶことができるということも、大谷大学の魅力の一つだと思います。

せっかく大学に入学したからには、いろいろな人と関わって話をすることをお勧めします。私もそうでしたが、もし現在、特に興味を持てるものがなかったとしても、他人と交流したり活動の幅を広げていくと、何か気になることや興味を持てるものが見つかるかもしれません。そして、それが自分の将来に繋がるかもしれません。学生時代に何一つ無駄なものは無いと思いますので、勉強だけでなく遊びやアルバイトを通じていろいろな人やものに出会ってください。

PROFILEプロフィール

  • 小南 あかり(こみなみ あかり)

    文学部社会学科 2002年度卒業

    本学卒業後、他大学の法科大学院を修了し、司法試験に合格。現在は堤半蔵門法律事務所にて勤務(2023年8月~)。