研究内容

約18000年前に出生したとされる「ブッダ」シェンラプ・ミボを開祖とする「仏教としての」ボン教が主な研究対象である。悟りを目指しつつ、仏教伝来以前の土着信仰の要素を「因の乗」として教義中に明確に位置付けているこの宗教の歴史、特に、18〜20世紀初頭にかけての東北チベット・アムド地方におけるそれを、高僧たちの伝記や著作に加え、口頭伝承も資料として明らかにすることを課題としている。また、その教義研究として、ボン教ラムリム(道次第)文献の翻訳研究にも着手している。近代日本のチベットとの関わりにも関心を持つ。特に、寺本婉雅(1872–1940)と小栗栖香頂(1831–1905)に焦点を当てて研究を進めている。

ゼミ紹介

アムド地方の農村部(青海省循化県)に伝わる民話をチベット語で読んでいる。チベット語運用能力の向上をその第一義としている。テキストは文語化されたものであるが、幸いなことに、元となった語り手による語りの音声データがあるため、場合によってはこれを聞き、テキストを修正する必要がある。まずは直訳し、その上で、民話にふさわしい日本語に修正してゆく。こうした作業を通じて、チベット民話の構造的特徴を検討するとともに、そこに見られるチベットの文化様相やチベット人のモノの考え方に対する理解を深めたい。一方で、翻訳という行為のありようについても考えてゆければと思っている。

主な担当授業科目

【院】地域文化研究/国際文化演習/人文情報学演習/表現文化演習/ブッダに学ぶ

所属学会

日本チベット学会/日本印度学仏教学会

経歴・活動歴

1967年岡山県生まれ。大谷大学大学院文学研究科博士課程満期退学。大谷大学特別研修員、同非常勤講師、富山大学非常勤講師を経て、2003年より現職。

主要著書・論文

共訳

  • 『天翔ける祈りの舞:チベット歌舞劇アチェ・ラモ三話』(臨川書店、2008年)

論文

  • 「19世紀のボン教僧ダワ・ギェンツェンの2つの伝記について」
  • 「シェーラプ・ギェンツェンの伝記『昔の教え』について」