文芸奨励賞 受賞作品

2022年度文芸奨励賞 受賞作品/テーマ「本当に大事なこと」

挨拶

大谷大学教育後援会会長 鷹橋 賢淳

 2006年度に創設された大谷大学教育後援会文芸奨励賞は、在学生を対象に「言葉による表現意欲を奨励すること」を目的に継続されてきました。「表現」にはさまざまな形がありますが、「言葉」による表現の奨励に大谷大学の伝統を感じさせていただいております。
 今年度は、「本当に大事なこと」をテーマに、218編の応募がありました。
 
 「本当に大事なこと」。私自身も本学の出身ですが、在学中に同様のテーマを投げかけられ、生涯初レベルの大きな疑問符を感じたことを記憶しています。そして五十代の後半となった現在も、そのテーマは、問いのままです・・・。
 今回、応募作品の手書き文字からペンを持つ手をたどるように、キラキラした若さ、悶々とした思い、一人ひとりからほとばしる感情の表現に触れさせていただき、問いがスタートで答えがゴール、というような単純なものではないと実感しました。
 大学HPには「問い、続ける。」と、いわば本学の精神が表現されていますが、今後も、大谷大学が、在学生一人ひとりにとって「本当に大事なこと」を「問い、続ける。」場所であり続けることを心から願っています。教育後援会はいつも応援しています。

講評

大谷大学学生部長 藤枝 真

今年度の文芸奨励賞のテーマは、4月に就任した一楽真学長のメッセージの中から採用されました。「様々な問題が次々に起こってくる社会の中にあって、本当に大事なことは何なのかをはっきりと見定め、確かな歩みを進めていく人を生み出すことを願いとしています」。これは大谷大学のあるべき姿を表したメッセージですが、その中心となる言葉である「本当に大事なこと」をテーマとして作品を募集しました。

応募総数は218件でした。着眼点や表現スタイルが作品ごとに大きく異なり、驚きと楽しみを感じながら選考にあたりました。私にとって大事なこと、人間全体にとって大事なこと、他者を見つめる私、私を見つめる誰か、大きな視野、微細な視線、限られた文字数の中に多様な世界観が展開されていました。

最優秀作品に選ばれたのは、設定されたテーマがもつ肯定的なニュアンスをいったん見直した上で、通常は否定的な意味をもって見られている「過ち」の大切さを、冷静でありながらも力強く表現した作品でした。

私たちが生きるこの世界は、大切なものにあふれている素晴らしいものですが、それと同時に、その大切なものはふとしたことで簡単に自分の手から滑り落ちて壊れてしまう危うさも併せ持っています。

そうした美しくも不安定な世界にあって、本当に大事なことを見きわめ、そしてそのために行動する力を養う、これが大谷大学で学ぶことの意味です。そして、日頃の学びの中で培った知見や実践が、今回の数多くの応募作品の中にはしっかりと息づいていたことが喜ばしく思われます。

学生の皆さんの確かな学びと、それを言葉で表現する意欲とが結びついた素晴らしい作品が数多く寄せられることをこれからも期待しています。

2022年度 受賞作品 【敬称略】

最優秀賞

島田 沙弥香【社会学部 コミュニティデザイン学科 第3学年】

 人生の汚点だと思っていたことは
 実は私を形作る大事なものであった。
 本当に大事なことは過ちの中にある。

優秀賞

迫田 菜々子【文学部 仏教学科 第2学年】

 ありがとう 五音に込もる 温もりを
 冷めやらぬまに あなたへ返す

岡本 麻結子【文学部 哲学科 第1学年】

 中庭の隅のレモンの木
 その葉っぱにもちっちゃな生き物
 大きないのち。

佳作

間野 岳雄【博士後期課程 仏教学専攻 第1学年】

 友が逝き、私の心に穴が空いた。
 私の心は私だけのものではなかった。

岡本 煕子【文学部 真宗学科 第4学年】

 あたりまえなこと。
 時間は戻せないこと。
 未来は不確実なこと。
 あたりまえじゃないこと。
 今ここにいること。

鹿田 大知【社会学部 現代社会学科 第4学年】

 社会は
 「迷惑の掛け合い」で
   つくられていると気付くこと。
 あなたもためらわず
   迷惑を掛ければいい。

藤井 響流【文学部 真宗学科 第3学年】

 「本当に大事なこと」がわからない。
 そんな「自分」と向き合っていくことが
 大事なのかもしれない。

堀 和樹【文学部 真宗学科 第3学年】

 本当に大事なことってなんだろう
 考えても結局私にはわからなかった
 答えがほしい自分がいた

三輪 阿南【文学部 真宗学科 第3学年】

 本当に大事なことは林檎のようにあちこちに成っている。
 しかし手は二つしかなく、掴めるものはわずかである

藤江 拓実【文学部 仏教学科 第3学年】

 今の自分は、網のような人間関係の
 上にある。常に自分は一本の糸でなく、
 網の中に存在しているのである。

岡本 宗久【社会学部 現代社会学科 第3学年】

 本当に大事なことは
       まだ見えない。
 だから現実や未来を
       視る目を閉じない。
 
 それが今の僕にとって大事なこと。

源 唯翔【文学部 真宗学科 第1学年】

 本当に大事ではないものなんて、この世にない気がする。
 だから全部を大事にしたいな。

赤坂 悠多【文学部 文学科 第1学年】

 本当に大事なことについて格付け をしない。
 私の大事なものは、道具じゃない

糸数 翔太【文学部 文学科 第1学年】

 あれも大事、
 これも大事、
 たくさんの大事が溢れすぎて、
 本当の大事を見失っているのではないだろうか。

黒田 愛実【文学部 文学科 第1学年】

 粉々になった心は
 元には戻らない
 壊れかけの心なら
 まだ修復できる
 壊れる勇気より修復する勇気を

齋藤 優和【教育学部 教育学科 第1学年】

 保育士になる。
 海外へ行って世界を見る。
 夢を持つと、
 何気ない生活は
 煌めき出す。
 今日も生きようと思える。