2017年度文芸奨励賞 受賞作品/テーマ『Be Real』
挨拶/大谷大学教育後援会会長 三村 智子
大谷大学教育後援会文芸奨励賞は、学生支援事業の一環として、本学の学生を対象に文芸作品を募集し、「言葉による表現意欲を奨励すること」を目的に、2006年に創設された賞です。
今年度は、テーマが「Be Real」ということもあり、「現実」という言葉が使われた作品が多く見受けられました。現在進行形の現実や、過去から現在に至るまでの各自の思いや温もりを、豊かな感情表現を用いて創出された作品や、理想と現実との乖離に悩み苦しんでいる自分自身を表現した作品、表現技法を駆使し、技巧に優れた味わい深い作品、たった1箇所の表現を変えることで、意味が大きく変化する作品など、わずか50文字で、読み手の心に残照を残す個性あふれた作品に出会えたと思っております。
文芸奨励賞は、学生の勉学意欲やチャレンジ精神を高揚する一つの褒賞であり、文科の大学として大きな意義をもつものです。皆様の豊かな自己表現力を発揮する場として、どんどんチャレンジしていただきたいと、心より期待いたしております。
講評/大谷大学学生部長 箕浦 暁雄
大谷大学は、2018年4月から文学部と社会学部と教育学部の「3学部体制」になります。それに伴い大谷大学を象徴する新メッセージを教職員が一緒になって作成しました。それが「Be Real 寄りそう知性」です。学生たちともこのメッセージを共有するために、今回は「Be Real」を文芸奨励賞のテーマに据えました。学生たちには、それぞれに受けとめた「Be Real」を表現してほしいと願って作品を募集しました。
我々が経験する現実に対してしっかりと目を向けること、それでいて仏教の教えに照らして自分自身のあるべき姿や世界のあるべきかたちを求めて歩んでいくこと、この二つを大切にすべきであるとあらためて大谷大学は表明したことになります。学生たちにもまた大谷大学が重きをおくこのような精神について立ち止まって考えてもらいたかったからです。
221篇の応募作品のなかから最優秀賞・優秀賞・佳作を選びました。学生の日常がありありと映し出された作品がありました。なんども読んでじっくりその意味を考えたいと思う作品もありました。文芸奨励賞の応募を通して、言葉に対する繊細な感性あるいは大胆な表現力を身につけてもらいたいと思います。学生時代にたくさん文学作品を読み、もっともっと自分でも文章を書くことに親しんでください。小説や詩の豊かな世界に触れること自体が、我々の日常を豊かにするはずです。
最優秀賞
菜原 惟信【文学部 真宗学科 第3学年】
あなたとわたしは同じ人間じゃないが。 あなたとわたしは同じ、人間じゃないか。 点一つで、人は変わる。 |
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優秀賞
船山 祥汰【文学部 真宗学科 第2学年】
我生れて年二十 是れを祝い吟杯を撲つ 忘るる勿れ家人の恵を 花の如く未来を歩まん |
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井本 知佐【文学部 歴史学科 第1学年】
初めて起きた私は裸で 現実の中 多くの衣を着た今 その衣たちを知る そして もとの私を見つける |
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佳作
上橋 真教【文学部 文学科 第4学年】
現実と真理の「間」に 自分という存在を 問いつづける「人」こそが、 「人間」として生きるということ。 |
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渡辺 裕香【文学部 真宗学科 第3学年】
我が いのちの慟哭を聞け。 死にたくない 死にたい、死にたくない。 味の濃い酢豚を食う。うまい。生きている。 |
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北畠 章太郎【文学部 真宗学科 第2学年】
できてないから 指導してるのに なんでそんな顔をする。 教えることは 教わるよりも難しい。 |
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奥西 文香【文学部 哲学科 第2学年】
私はまだ、私を知らない。 私はまだ、世界を知らない。 知りたい、分かりたい。 私を、世界を、そして誰かを。 |
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鮫島 想太【短期大学部 仏教科 第1学年】
「将来 不安」と検索した。 検索画面が私を嘲笑う。 ふと気付く。 ここに答えはないと。 |
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横田 晴佳【文学部 仏教学科 第1学年】
この手に収まる液晶の向こうではなく 世界は今、「私」、の目の前にある |
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井上 貴裕【文学部 歴史学科 第1学年】
朝起きて 二時間かけて 学校へ 眠い目こすり 授業を受ける。 思い描いた学生と 全く異なる現実 |
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森 実季【文学部 文学科 第1学年】
母は現実 姉は真実 役立つ「私」を求める母 今生きてる「私」を求める姉 そして自分は姉のような母を求めている |
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神近 維吹【文学部 教育・心理学科 第1学年】
話しかければ返事がある 家に帰れば 食事の準備 掃除 洗濯 済んでいる 一人暮らしをして気づく 親の凄さと有難さ |
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咲本 朗【文学部 教育・心理学科 第1学年】
真理を探究する前に、目の前の現実を 知りて一歩目。踏み出した一歩が真実を 追求する力になる。 |
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