海外研修プログラム報告

2009文化研修【ヨーロッパの宗教と文化(フランス)】

概要

日程 2009年8月26日(水)~9月8日(火)
参加数 21名(引率者2名)
おもな研修地 ●アルザス地方
オベルネ、ストラスブール、ストリュートフ旧ナチス収容所、オーケーニヒスブルク
城、ウンターリンデン美術館、ライン河畔、コルマール、カイゼルスベルク、キンツ
ハイム、シゴルスハイムの丘、リクヴィル、エギスハイム、ディジョン

●ブルゴーニュ地方
ボーヌのオテル・デュー、クロ・ドゥ・ヴージョー(ワインシャトー)、ヴェズレー

●その他
ヴェルサイユ、パリ

スクロールできます。

研修報告

2年に一度行われるフランス研修は、まずドイツのフランクフルトから専用バスで3時間かけてフランスに入り、朝市で賑わう美しい街オベルネからスタートしました。関空から香港経由で、フランスのストラスブールには約20時間後の早朝到着、そのままバス移動でオベルネ観光開始という、かなりハードな旅の開始でしたが、学生諸君は若いだけあって想像以上に元気で、引率側もほっとしました。2日目以降については、時間的にもゆったりと組まれたスケジュールとなりました。100メートルを越えるストラスブール大聖堂の頂上付近まで、なんとほぼ全員が歩いて登ることに挑戦したり、楽しいハプニングにも事欠きませんでした。

アルザスは、これまで何度も独仏間での争奪の地となり、苦難の歴史をたどってきた地方です。今回われわれは、いわゆる観光旅行では訪れることができないような、美しいシゴルスハイムの丘に広がる広大な無名戦士の墓や、旧ナチスの強制収容所ストゥリュートフなどもあえて訪れました。絞首台や人体実験の手術室もそのまま残る施設の光景に参加者は強烈な衝撃を受けたようでしたが、かつてアルザスが強いられた歴史的教訓の重さや平和と自由の保持の尊さについて、また人間性さえ奪いかねない戦争の恐ろしさについて、改めて深く思いをめぐらす機会となりました。

(写真左より)コルマールのウンターリンデン美術館見学を前に/クロ・ドゥ・ヴージョーのぶどう畑で

もちろん楽しい観光の部分が少なかったわけではありません。滞在中は、いかにもアルザス的な、まるで童話の世界のなかのような美しい街や、かわいらしい村の数々を訪れて散策を楽しみました。ワイン祭さなかの中世の村エギスハイムと、周囲わずか1キロほどの城壁に囲まれ、色とりどりの花々に飾られた静かな村キンツハイムなど、それぞれ個性も豊かでした。また、カイゼルスベルクでも、横手に廃墟としてそびえる荒城の頂にまで登り絶景を楽しんだ元気な人も多数いました。

総じて、一般の観光旅行では経験できない部分での満足度が高かったようです。これはブルゴーニュに移っても同様で、中世ブルゴーニュ公国の古都ディジョンや、ワインの都ボーヌでは、アルザスとはまた違った街並みや伝統の魅力に、めいめいの関心とペースに応じてじっくり接してもらいました。世界的に有名なワインシャトー、クロ・ドゥ・ヴージョーでは、うち解けた雰囲気のなかでカーヴ見学と試飲とを楽しみ、その名高い丘で世界遺産に登録されているヴェズレーでは、マグダラのマリアを奉る聖マドレーヌ寺院を訪れその聖遺骨や美術史的に価値のある彫刻などを目のあたりにしました。丘の上から見渡す限りに拡がるブルゴーニュ独特の田園風景は、実り多い地方研修の掉尾を飾るにふさわしいものでした。幸い、ほぼ全行程を通じて天候に恵まれ、事故もなく無事にフランス研修を終えることができたのはなによりのことでした。

最後に関空に無事帰着したとき、思いがけず全参加者から自発的に、引率者二人と添乗者のそれぞれにメッセージメモが渡されるというサプライズがありました。皆それぞれにとって満足度の高い研修旅行だったことが改めて知れたことは、引率者、添乗者にとって何よりも嬉しいことでした。参加者だけでなく引率者も共に楽しみ、新たな発見も多かった研修でした。

【並木 治(専門/フランス文学 フランス文化)】