学術研究

2022年度指定研究/大谷大学所蔵仏教写本研究

2022年度研究体制

 
研究名 大谷大学所蔵仏教写本研究
研究課題 パーリ語貝葉写本の研究—保存、整理、情報収集およびネットワーク構築を中心に—
研究代表者 DASH Shobha Rani
研究組織 <研究員>
  • Dash Shobha Rani(教授・インド学・仏教学・貝葉写本研究・インドの古典芸能)
  • 新田 智通(准教授・仏教学(インド))
  • 戸次 顕彰(講師・仏教学)

<嘱託研究員>
  • Suchada Srisetthaworakul(古典写本研究センター・センター長<タイ・アユタヤ>)

研究意義・目的

 大谷大学には、パーリ語、サンスクリット語等で書かれた仏教に関する写本が数多く所蔵されている。その一部はある程度整理され、研究されているが、未整理で研究されていないものも多く残っている。大谷大学所蔵の写本の中に1900年にタイ王室から寄贈されたと思われるパーリ語貝葉写本群が日本最大級のものと言われ、研究者の注目を浴びる。2020年度より写本の総合的な情報取集を目指して、ハイデルベルク大学(ドイツ)と共同研究を続けている。日本パーリ学仏教文化学会から招聘を得て、大谷大学所蔵パーリ語貝葉写本の現状と展望について公表済みである。これらの機会に、大谷大学所蔵写本の公開や、共同研究の要望が示された。
 写本研究と言えば、写本からの現代文字やローマ字への転写、校訂テキストや翻訳等のいわゆる研究資料の作成といった活動が中心で行われることが一般的である。しかし、写本とは単なる文字の集合体ではなく、それが作成されたまたは書写された地域・文化の様々な様相も含まれている。例えば、貝葉写本を単に読むためのものでなく、それ自体を崇拝の対象として扱っている事例も南アジア・東南アジアの国々に見られる。そのため、写本の「総合的な研究」が求められる。
 本研究は、文献研究に留まらず、写本研究に基づき、南アジア・東南アジアを中心にその文字、言語、文化、信仰などの国際的・学際的な研究を行うことを目的とする。加えて、仏教写本の特徴や性格をより明白に示すために、その他の対象写本と比較検討する。
 研究者のネットワークを築くとともに本研究の視野を広げる目的で、海外の研究機関との学術交流を図り、それら研究機関の所蔵資料をも活用し、人材の協力を得る。写本や関連文献の研究を踏まえ、諸国における仏教文化や仏教の現状について研究することが可能になり、多角的な視点から仏教の受容性、現代におけるその意義を明らかにする。学術交流の一環として、交流先の研究者と本班(必要に応じて、他の研究班も含む)の人材を生かして、共同研究・国際シンポジウムなどを開催し、その成果を出版物として公刊する。
 研究活動及び成果の国際的な評価を目的として、海外の研究機関における研究活動紹介、成果発表会を定期的に行い、英語での出版を目指す。そして、本研究は写本中心ではあるが、仏教思想、仏教文化という拡大した領域に渡って研究を行うため、研究者のみならず、社会に還元する目的で、成果の一部を一般の社会人を対象に公開発表会も定期的に行う予定である。以上に述べた研究目的には発展的な要素が含まれているため、短期間に達成されるとは考えられないので、将来に亘って研究が発展的に持続されることが願われる。

関連リンク