真宗総合研究所概要

2026年度特定研究/教育機関における「宗教教育」に関する総合的研究

2026年度研究体制

 
研究名 教育機関における「宗教教育」に関する総合的研究
研究期間 2026~2028年度
研究課題 中等教育機関及び大学における「仏教教育」の現状と課題
研究代表者 学長 木越 康
研究組織 <研究員>
  • 森田 裕之(教授・教育学)
  • 西本 祐攝 (教授・真宗学)
  • 寺川 直樹 (准教授・教育学)※庶務

<嘱託研究員>
  • 四方 保仁 (本学非常勤講師)
  • 乾  文雄  (大谷高校教諭(宗教科))
  • 曽我 円成     (大谷高校教諭(宗教科))

<研究補助員(RA)>

  • 髙松 英照(博士後期課程第1学年)

研究意義・目的

 現在日本では、さまざまな宗教系の教育機関において、それぞれに「宗教教育」がなされている。ただそれらは、仏教系・キリスト教系を中心に各宗・各派に個別の目的や意義に基づいて展開され、その内容は一般に公開されるものではない。本研究では、大谷大学を含めた真宗大谷学園内における宗教教育現場はもちろん、他の宗教系教育機関の状況を把握した上で、特に「仏教」「真宗」を中心とした宗教教育の意義や目的、達成のための適切な手法について検討を加える。これにより、「真宗教育(仮)」に関する総合的研究を行う。以下において、この研究の意義・目的にまつわるより詳しい説明を試みたいと思う。
 宗教について自然科学との関係で考察するために、20世紀の著名な物理学者ファインマン(Feynman, R., 1918-1988)が物理学に関して語った次の文章を手がかりにしてみよう。「重力のからくりはどうなっているのか。われわれがやってきたことは、地球が太陽のまわりを〈どのように〉回転するのかということに尽きているのであって、〈何が地球を動かしているのか〉については語らなかった。ニュートンはこの点について仮説を立てなかった。彼はそのからくりに立ち入ることなく、それが〈何を〉なすのかを見出すことで満足した。〈それ以来誰一人としてそのからくりを提起できなかった〉。そのような抽象的性格をもっていることこそが、物理法則の特徴である」(Feynman, R., The feynman lectures on physic, Vol. I, § 7-7)。
 この文章からよくわかるように、物理学を含む自然科学は、「いかに作用するのか」と問い、ケプラーの経験的な法則からF=-GMm/r2を導出するように、現象から帰納的に遡行して数学的関係を発見することでよしとし、その先のより普遍的で根源的な原因への追究も詮索もしない限定的で相対的な学問体系である。別言すれば、自然科学という学問は、「重力の原因とは何か」とまでは問題とせず、「なぜ、何によって作用するのか」という形而上学的な問いを戦略的に放棄し排除することによって成立するばかりでなく、そのように排除したからこそかえって飛躍的に発展を遂げてきたのである。
 このように特徴づけられる自然科学との対比で考えるならば、「なぜ、何によって作用するのか」といった形而上学的な問いを真正面から引き受ける最有力なものの一つが、宗教である。この形而上学的な問いの探求は、そこから翻って「生」の意義や「人」の存在の内実を照らし返す仏教にも通じる。これらは自然科学がけっして問おうとしない問い、自然科学がそれを問えば破綻してしまう「なぜ、何によって」という問いをそれでも執拗に発し、形而上学的な問題を適切に立て、存在論的意味をどこまでも探究し続けようとする〈問い‐問題〉の営みであり、それこそが宗教の問題となる。
 さしあたり守備範囲をこう規定できる宗教が、ひとたび教育と結びつくとき、そのあり方は必ずしも明確であるとは言えなくなる。それというのも、「宗教教育」という言葉は、「宗教」と「教育」という二つの語が無媒介に連結した言葉という成り立ちから、二つの仕方で読むことが可能だからである。ごく素朴に「宗教を教育する」と読む仕方がその一つであり、こう読めばその意味は明解であり、「特定の宗教の教えないしは宗教一般に関する知識を伝達する」ほどの意味になろう。いま一つは、少し思慮深く「宗教を手段として教育する」と読む仕方である。こう読むとき、たちまち困難に直面する。教育の手段としての宗教とはどのようなものなのか。そもそも、目的それ自体である宗教を手段化してよいのか。宗教を通して何を教育するのか。宗教を手段とした教育という行為は一体何を指すのか。このように一連の問題を列挙するならば、「宗教を手段として教育する」という読み方の背後には、「教育にとって宗教とは何か」「宗教にとって教育とは何か」という原理的な問いが、伏在しているものと見定めることができる。上記の原理的な問いの視座から、まずは宗教と教育をめぐる検討をはじめる。
 

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