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きょうのことば

きょうのことば - [2006年07月]

執着から欲望が生じ、欲望から怒りが生ずる。

「執着から欲望が生じ、欲望から怒りが生ずる。」
『バガヴァッド・ギーター』(岩波文庫 p.41)

 『バガヴァッド・ギーター』(神の歌)は、紀元後1世紀頃成立したヒンドゥー教の聖典です。インドの大叙事詩『マハーバーラタ』の一部を構成しており、18章700詩節から成り立っています。ヒンドゥー教の宗派を超えて尊重されており、約2000年間にわたってインド人の精神生活に影響を与えてきました。

 そのなかでは私利私欲を捨て、成功や失敗という行為の結果を期待、危惧せずに自己の義務を遂行することが勧められています。これはそれまでのインドで主流であった思想、つまり出家して社会生活を捨てなければ解脱(げだつ)の境地に達することはできないという考えを乗り越える思想です。それゆえ社会生活を保ちながら解脱できるという道を開いた『バガヴァッド・ギーター』はインドで圧倒的な支持を得ました。

 冒頭のことばは『バガヴァッド・ギーター』第2章第62詩節「人が感官の対象を思う時、それらに対する執着が彼に生ずる。執着から欲望が生じ、欲望から怒りが生ずる。」のなかのことばです。人間は常に外界の対象に興味を示します。眼・耳・鼻・舌・身という5つの感覚器官を通して、色、声、香、味、触などの対象を認識します。つまり人は眼に美しいものを見るとそれに執着します。耳に美しい音を聞くとそれにも執着します。鼻によい香りがすると執着します。舌においしい味がすると執着します。皮膚に心地よい感触がすると執着します。このように対象を認識することによってそれらに対する執着が生じるようになります。そしてそれらを自分のものにしたい、所有したいという欲望が生まれます。その欲望が満たされないと怒りが生じるのです。

 『バガヴァッド・ギーター』は、欲望と怒りは人間にとって最も根源的な悪であり、輪廻(りんね)の原因であると言います。戦争や環境破壊という地球規模の大きな出来事もひとりひとりの人間のこころのなかの欲望と怒りが根源となって起こっています。法律や条約だけで戦争や地球環境の破壊を止めることはできません。それらを本当に止めるためには、対象に執着しないように自分自身の感覚器官を支配、制御しなければなりません。ひとりひとりの人間が自らの内面と対峙し、欲望や怒りを生じさせないことで、こころの平安を得るときにはじめて地球環境も守られるようになります。世界とは人間のこころの表れなのです。

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