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今という時間

今という時間 - [223]

「石材の故郷」
西田 潤一(にしだ じゅんいち)

 大谷大学の正門を入るとその正面に横6メートル、高さ0.9メートル、奥行き0.9メートルの赤色の花崗岩の石碑があり、そこには「大谷大学」の文字が彫り込まれている。さらに、その右側には尋源館(じんげんかん)と呼ばれる旧館の2階へと登る階段があり、階段はすべて赤い色の花崗岩からできている。この石碑と階段は昭和57年に現在の研究棟が建設されたときに設置されたものである。
 一見するとよく似た花崗岩であるが、石碑の花崗岩と階段石の花崗岩の産地は遠く離れている。石材を納入した業者の覚え書きによれば、石碑の花崗岩の産地はブラジル・リオグランデ・ド・サル州であり、その重量 は12.7トン、階段の石材の産地はインド・カナタカ州・イルカル村となっている。地図で大体の位 置を調べ、『岩波講座地球科学16—世界の地質—』でこれらの花崗岩はいつ頃のものか調べてみると、いずれも5億年以上も前の地質時代の岩石であることがわかる。
 現在ブラジルとインドは地球の反対側に位 置するが、古生代末(約3億年前)には南アメリカ大陸とインドはゴンドワナ大陸の一部であった。この大陸は約2億年前(ジュラ紀)に分裂を開始し、その後現在の地図の位 置へと落ち着いた。
 かつてひとつの陸地を構成し、現在は遠く離れた大陸の岩石が日本で再見することに、ある種のロマンを感じるのである。

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