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今という時間

今という時間 - [217]

「琵琶湖岸をゆっくり走ってみると」
一色 順心(いっしきじゅんしん)

 京都の大学に勤めているが、自宅は岐阜にあり、週末は自家用車を運転して移動している。
 高速道路も利用はするが、いつも琵琶湖岸を走ることにしている。そこは、道路が湖に沿って伸びているから、交差点が少なく信号機もあまりない。広大な田畑や、湖に浮かぶ水鳥の群れを垣間見ながら運転をする。時には、湖岸の空に、色鮮やかな虹が架かっているのを見ることもある。
 道路沿いには、地元の農家の人々が栽培した作物の直売店がある。商品が新鮮で、品数も豊富、値段が安いこともあり、店には多くの買物客が訪れている。店番は農家の人で、売り込みの掛け声などはない。店内では、客たちが声を掛け合いながら和やかに品定めをし、素朴でのんびりとした雰囲気なのである。
 今の時代、高速道路を利用することで、スピードアップをはかり、時間を短縮させようとする。また、スーパーは売り上げ増加をねらい大型化し、賑やかな商戦を繰り広げる。一方、私たちはそのような風潮を当たり前のように受け入れてしまっているのかもしれない。
 しかし、琵琶湖岸を走ってみると、普段見られないような自然の風景が広がり、値段の駆け引きを感じさせない売り場を見られる。実は、私たちは、そのような素朴で和やかでゆったりとしたものを求めているのではないだろうか。

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