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今という時間

今という時間 - [213]

「兄弟姉妹数の減少」
蜂屋 良彦(はちや よしひこ)

 「犬の子に生まれても、中の子には生まれるな」 私がよく耳にした言葉である。長子や末子に比べ「中の子」にまでは親の注意が及びにくく、捨て育ちの「犬の子」よりもかまってもらえないことがあることを言ったものだと思う。親の養育行動と子どもの出生順位 との関係を調べた実験的研究によると、親は長子が泣いたときに最も早く駆けつけたという。妹や弟がいる「中の子」は、親の注意がそちらに向きがちであるので、つい忘れられやすいのであろう。「中の子」のもつメリットも勿論あるわけで、自由を享受でき、その結果 自立心もついてくる。
 学生にこのような話をすると、以前は強い反応があった。自分の兄弟姉妹関係にこのことを当てはめてみて、「当たっている」いや「当たっていない」と活発な議論を引き起こした。学生の中には、講義の内容はすっかり忘れてしまったが、あの言葉だけは憶えているという者もいた。
 ところが最近は、この話をしてもあまり反応が返ってこない。なぜなのか。一つには、少子化で「中の子」体験者が激減してしまったこともある。「中の子」を体験することは今や貴重なことなのだ。私自身は姉兄姉私妹弟という貴重な関係の体験者である。
 もう一つの理由は、「犬の子」の地位の向上だ。今日では、人の子と同等あるいはそれ以上に大事にされ保護されている犬の数が増えてしまって、皮肉な意味合いを失ってしまったのかもしれない。

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