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今という時間

今という時間 - [193]

「とりあえずの世界」
三木 彰円(みき あきまる)

 学生と一緒に「輪読会」という自主的な学習会を行っている。参加者各自の日程を調整しながら随時開催し、もちろん単位にも成績にも関係ない。テキストに何を選ぶかは、参加者の興味次第。意の赴くままにただひたすら読むという、ある意味では学習会と呼ぶことすらためらわれる会である。
 そんな会を持つのも、それが発想の自由の確保という点で、すこぶる有効だと思うからである。学問とは本来自由な発想に根ざすものである。大上段に振りかぶってしまうと、かえって身動きがとれなくなってしまう。自由な発想があればこそ、硬直化した視点を克服する方向も見出していける。
 考えてみると、自由な発想は、私たちの生き方にも必要なのではないだろうか。今の時代、政治、経済など人間が生きるあらゆる場面で硬直化した価値観が声高に叫ばれ、そんな中で私たちは身動きできずに生きているのではないか。本当に豊かな生き方とは、多様で柔軟な価値観に裏付けられ、互いを許容できる生き方であろう。そんな価値観を回復するためにも、自由な発想で、自由に考えることが今必要とされているのではないだろうか。
 そんなことを思うと、何気ない興味からとりあえずまず始めてみることも、まんざら捨てたものではないように思われる。遠回りなのかもしれないが、そこから思わぬ展望も開けてくるのではないだろうか。

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