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今という時間

今という時間 - [174]

「ソクポ僧との出会い」
松川 節(まつかわ たかし)

 「モンゴル(ソクポ)僧ならデープン寺にしかいないよ。」うららかな昼下がり、チベットの都ラサの中心にある大昭寺で、拝観券をちぎりながらチベット僧が教えてくれた。文書調査も一段落したので、ラサで修行するモンゴル人僧侶を尋ねてみることにした。
 デープン寺はラサ西郊にあり今でも500人余の僧侶が修行するチベット仏教の大僧院だ。運良く寺に戻る僧侶の同乗を得、タクシーは迷路のような僧院内をくぐりぬけてモンゴル学寮に辿り着く。
 ここでは72歳になるゲシェー・ロブサンダンザン師の下、二十歳前後の内モンゴルの青年僧5人が修行中だった。彼らはいわば特別クラスで、チベット僧のように勤行に参加することなく、毎日9時から5時までひたすら仏教学の基礎を学んでいる。ゲシェーに謁見してから青年僧の房舎に通され歓談した。故郷の内モンゴル興安盟で仏道に目覚め、山西省五台山のモンゴル僧院で3年間修行したが、観光客が多くて集中できないため半年前にここに来たのだと言う。
 確かに中国のチベット・モンゴル仏教寺院は、五台山にしても青海省のクンブム寺にしても近年観光地化が著しく、学問寺としての伝統を失いつつあるのが現実だ。
 「ラサで修行できるのも故郷の人々の寄進があるおかげだ。まず10年はここで学びたい。」当地ラサでも近代化・中国化による経済発展は日進月歩だが、青年僧の澄んだ目に込められた一途な想いが叶うことを私は祈りたい。

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