今という時間 - [159]
「ジンギス=カンの墓発見?」
松川 節(まつかわ たかし)
今夏も計20日余り、モンゴル国と内モンゴルで歴史調査をした。西モンゴルでの遺蹟調査を終え、首都ウランバートルに帰還した我々は大ニュースに接した。
「アメリカ・モンゴル合同調査隊がジンギスの墓を発見!」
10年前に日本モンゴル合同調査隊があれだけ探した墓が、まさにその探索場所で発見されたという。疑問に思い、モンゴル側の関係者に会って確認してみた。
「何の証拠もない。発掘さえしていないのだから…。」彼は困惑を隠し切れぬ様子だった。
ジンギスを始めとするモンゴル王族の墓は、今まで一つとして見つかっていない。今回、行なわれたのは表面調査だけで、確証のないままアメリカ側がスポンサー獲得のためアドバルーンを上げたというのが真相らしい。
内モンゴルに移動し、13世紀のオングート族の城趾オロン=スムを視察した我々は、付近の郷土博物館で、石棺に横たえられた白骨遺体を見た。なんと、オングートに嫁いだジンギスの第3女アラカイ=ベキだという。本当だとしたら、嫁ぎ先とはいえジンギス一族の墓が初めて見つかったことになる。
帰国後の9月末、日本モンゴル合同調査隊がジンギスの幕舎跡を発見したというニュースが流れた。これこそ「発掘」に基づく真の「発見」であった。来夏、ウランバートルで国際モンゴル学者会議が開催される。調査報告に俟ちたい。