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今という時間

今という時間 - [140]

「就職しない学生」
李 青(り せい)

 4回生は就職活動があるので、いつもならゼミの授業はまったく成り立たない。だが、私に限ってのことかもしれないが、今年は満員御礼。予想外に授業がきちんと成り立っている。
 そこで、就職について学生たちに尋ねてみた。「フリーターでいいかな」とか、「とりあえず自分の好きなことをしてみたい」などと答えてくれた。一人前として社会に貢献したいという気構えは見受けられない。当然、未来への理想も感じられなかった。普段まじめに勉強してくれる彼らの前途を思うと憂慮の念を禁じ得ない。
 異国育ちの私にとって、学生たちの行動は理解に苦しむことが多い。中国の大学は、ほとんどが国立なので、国が育ててくれたかわりに、国に奉仕するとか、社会に貢献するという使命感をもつのは常識だった。
ところが、中国では改革開放政策が始まって以来、大学教育が自由化されるようになった。学生たちは、国よりも自分たちの前途を最優先にする傾向が強いと、教育専門家は指摘している。
 日本は敗戦後の廃墟から、短期間に世界屈指の先進国となった。多くの「企業戦士」が、馬車馬のように働き、社会の繁栄をもたらした。
 理想の乏しい若者を生み出しているのは、社会の繁栄にも原因があるかもしれない。日本だけでなく、豊かになった中国の社会問題でもある。学生ばかり責めても解決できない問題ではなかろうか。

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