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今という時間

今という時間 - [136]

「受難の男たち」
滝口 直子(たきぐち なおこ)

 「カミさん、またパチンコにはまってます」「家内は、あいかわらず飲んで好き勝手言ってます」情けなさそうな男たち。賭博に、あるいは酒にと、はまっているのは、自分ではなく、妻なのだ。
 社会の変化にともなって、女性の酒や賭博への依存も増加しているようだ。女性依存者には、男性依存者以上の厳しい目が世間から向けられる。「女だてらに酔っぱらって」「主婦が借金するまでパチンコしたの」夫が依存症になった場合、妻がまず治療の場に現われ、夫をどうにか回復させようと努力するものだ。女性依存者の場合、すでに離婚して登場することが多い。しかし時には、妻の嗜癖のことで相談にくる「やさしい」夫たちもいる。
 男とは、苦難を黙って耐えるのみ?男性は自分の苦しみや感情を吐露するのが、やはり、苦手なのだろうか。家族会などというものは、たいてい元気なお母ちゃんや奥さんの集まりである。なにせ賭博者に代わって借金を返済したり、酔っぱらって仕事に行けない本人のために欠勤の口実をつくって職場に電話を入れたりと、どうにか家族が崩壊しないように、本人になり代わり、社会的責務を果 たしてきた女たちなのだから。
 「やさしい」夫たちは、どうも居心地が悪そうだ。とはいえ、男は家族会に来て、元気な女たちの話を聞いているだけでいい。妻への大きな支えになるのだから。受難の男に幸いあれ!

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