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今という時間

今という時間 - [132]

「親の親になる」
滝口 直子(たきぐち なおこ)

 賭博や酒への依存者をもつ家族は大変だ。そういった家族が集い、互いに支えあうのが自助グループであり、そこに集うのは、たいてい親(キョウダイ)や配偶者の立場の人である。しかし時には子供が登場することがある。「実は、父(母)のパチンコのことで来たんです」、「母が亡くなって、父一人なんですけれど、お酒が心配 で」。
 こういった子供は、いまだ未婚の20代もいれば、中年の既婚者もいる。そして見事に「孝女の鑑」である(孝子も時には登場するけれど)。学業優秀にもかかわらず、はやくに就職して家計を助けたり、自分のことは後回しにして親のものを買ったり、親が愚痴をこぼせば、辛抱強く聞き宥めたり、父母が離婚しないようにとそのかすがいになったり。幼少の頃から、小さな肩に大きな、重たい荷物を背負って、親を喜ばせよう、安心させようと、一生懸命に生きている。そのうち息切れしてくるのも無理はない。ところが、キレそうになりながらも、「私がいなくなったら、お母さん(お父さん)はどうなるの?」と心配のあまり、なかなか荷物を手放そうとはしないものだ。
 そもそも子供の役割とは、親の庇護と愛情のもと養育されることにある。こういう子供をみかけたら、「感心だね」などと言わないでほしい。子供が親の親になるのは、いつの世も、自然の摂理に反していることなのだから。

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