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今という時間

今という時間 - [123]

「何かをすること」
谷口 奈青理(たにぐち なおり)

 今まで良かれと思ってあれこれやってきたのに、子どもは学校に行かない。とにかく学校に行ってほしい。そのためならどんなことでもする。不登校の子どもをもつお母さんの相談である。「それでは」とこちらから提案する。「登校について子どもさんに何もいわず、何もしないでください」。お母さんは意外そうな顔をする。「そんなこと不安でできません」ということもある。
 このお母さんは自分が何かを「する」ことで子どもが学校に行くことを期待している。母親としてわが子のために何かしてやりたいと思うのは当然の気持ちであろう。しかし、自分の不安を解消したい、自分が役に立つことを確かめたいという願いが含まれてはいないだろうか。登校することが子どものためであると疑いもなく信じてはいないか。
 何もできない、役に立たないという無力感は本当につらいので、「何もするな」という提案はなかなか受け入れてもらえない。しかし母親が無力感に耐えつつ、「不登校」という学校社会で評価されない子どものあり方を受け入れ、何もしないことに不安を感じなくなった時、新しい可能性が生まれるのだ。
 不登校の子どもが12万人以上いるという現実は、役に立つこと、効果 があること、前に進むことだけをよいと評価する社会の価値観そのものに疑問を投げかけているのかもしれない。

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