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今という時間

今という時間 - [119]

「感謝の気持ち」
山本 昌輝(やまもと まさてる)

 先日臨床心理学の講義で「感謝」について解説した。感謝には罪悪感を裏打ちした深い感謝があることを話した。学生は、不服な思いから深い感謝が生じることを理解し辛かったようである。
 たとえば、子供が欲しい物を貰ったときの感謝は、おおむね浅い「有難う」である。しかし、そこで子供に与えない場合を考える。大切なのは、与えて貰えない子供のこころの痛みや子供の不憫さをしっかりと感じること。そしてこの気持ちを抱きながら、子供がぶつけてくる不満や怒りにとことん付き合うこと(耐えること)。この過程を通 して、欲しい物を手にするよりももっと深い感謝の気持ちを子供は手に入れることになる。
 不服な思いのうちにやがて子供は自分自身が親に許されていることに気づく。そして罪の感情と同時に許されたことへの深い感謝の気持ちに到達するのである。
 ここで重要なのは、親子間の一つの遣り取りは満足を与えることで終結するが、与えずに苦痛が共有されれば、その関係は持続するということである。後者の方が遙かに心血を注ぐことになる。
 現在、家庭においても浅い感謝で済むようにしてはいないだろうか? 深い感謝をもたらす親密な人間関係が今、求められている。こころの痛みこそが大きな実りをもたらすことを、心理臨床家は知っているのである。

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