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今という時間

今という時間 - [101]

「予感」
河内 昭圓(かわち しょうえん)

 北京王府井に日本の百貨店が出店したとき、その予感があった。市井の八百屋から起って一代を築いた経営者は、意を得て時代に輝き、テレビに出演して自身の半生を、中国への熱い思いを語った。質問者は感動のまなざしをもって、老大家のことばの一つ一つに大きく頷いた。前後して日本企業の中国進出が相継いで報じられ、中国は魅力的な市場であるように、一般 には見えた。大学では中国語の人気が高まり、実のところは甚だ厄介なこの言語を第二外国語に選択する学生が60%を越えた。日本の百貨店が北京の一等地を逐われた。王府井を再開発するというのがその理由である。企業にとっては大きな打撃であった。問題性はいろいろあったに違いないが、この会社はその後倒産した。中国経済の8%成長は、その多くが外資に負い、外資系企業はまた膨大な雇用を生んでいる。日本のこの中に占める比率は大きいが、ここにきて自発的な投資意欲は減退している。巨大市場の魅力は色を失い、むしろ投資の回収に強い懸念を抱いているのである。数年来、中国人密航者大量 逮捕の報道が続き、「蛇頭」の文字が紙面にあふれている。近くは訪日した江沢民が過去にこだわって日本人の印象を悪くした。一層の投資を促す戦術であろうが、八路軍の猛将 小平とは相違した。
 今年度、中国語を選択する学生は、40%台に下落した。予感はことごとく現実となった。

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