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今という時間

今という時間 - [017]

「スフィンクスの謎」
新村 祐一郎(しんむら ゆういちろう)

 ギリシャ神話に登場する多くの英雄の一人に、テーベ国の王子エディプス(オイディプス)がいる。彼の出生前に「父王を殺し、生母と結婚する」という恐るべき神託が下り、生まれると同時に棄てられた。しかし彼は隣国の王に救われ、その国の王子として養育され成長する。後に旅に出たエディプスは、些細な諍いからそれとは知らずに実の父王を殺してしまう。
 そして女性の顔と胸、ライオンの胴・足・尾を持つ怪物スフィンクスの、あの有名な「朝に四脚、昼に二脚、夕に三脚」という謎を「それは人間である」と喝破し、スフィンクスをして海に身を投じせしめ退治する。
 この功績をみた王妃は、わが子とは気づかずエディプスを夫に迎え、彼は王位 に就いたという。
 この神話から心理学者のフロイトは、男の子が無意識に同性である父親に敵意を抱き、母親に愛着を持つ傾向をエディプスコンプレックスと名付けたのである。
 時代は変わり、今日の我々は直接的にはエディプスほど数奇な運命を生きてはいない。けれどもさまざまな心の葛藤を抑圧し、機械文明の中に埋没し、押し流されて生活している感がある。しかし時には立ち止まって、人間は如何にあるべきかということを考える余裕を持ちたい。
 さもなければ、スフィンクスの亡霊に「では人間とは何か」と重ねて問われたときに慌てなければならなくなるであろう。

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