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生活の中の仏教用語

生活の中の仏教用語 - [222]

四天王

「四天王」
浅見 直一郎(あさみ なおいちろう)(助教授 東洋史)

 何々の四天王という言い方がある。関西でよく聞くのは上方落語の四天王で、二十年近く前に没した六代目笑福亭松鶴に桂米朝・桂春団治・桂文枝を加えた四人を指す。
 言うまでもなく、「四天王」は本来仏教語であって、須弥山中腹の四方を居所とし、山頂の帝釈天に仕える仏法の守護神、持国天・増長天・広目天・多聞天[=毘沙門天]の四天をいう。仏像では、甲冑に身を固め、邪鬼を踏みつける忿怒相の武神の姿が一般的である。
 日本の仏教において、四天王が果たしてきた役割は大きい。古くは聖徳太子が物部守屋との戦いに際して四天王の像を作って勝利を祈念し、これが四天王寺創建の由来となったと伝えられ、また奈良時代には四天王による鎮護国家を説いた部分を含む『金光明経』が重視され、諸国に金光明四天王護国之寺[国分寺]が造立されている。さらに平安時代以後は毘沙門天が独尊で信仰を集めるようになるなど、四天王に対する崇敬は篤いものがある。
 ところで、優れた力量を持つ四人を四天王と呼ぶ派生的な用法は、中国では例を見ず、日本独自のものらしい。その代表は源頼光の四天王[渡辺綱・坂田金時ら]であろうが、他に徳川家康の四天王[酒井忠次・井伊直政ら]や和歌四天王[頓阿・兼好ら]も知られている。いずれもある人物の部下または門弟であって、和歌の場合も、当時のいわば家元であった二条為世の門人で、単に優れた四人の歌人という意味ではない。
 さて、いま最も新しい四天王は、“ヨン様”ことぺ・ヨンジュンをはじめとする韓国の四人の人気俳優、韓(ハン)流四天王であろう。これは果たしてふさわしい表現なのであろうか。
 上方落語の場合、松鶴師たち四人は同門ではなかった。しかしそれをあえて四天王と呼んだのは、<(一度は滅びかけた)上方落語を護持する者たち>という意識が働いたためではないかと思う。一方韓流四天王の場合は、ただ人気者を四人並べたに過ぎないようにも思える。あるいは、人々は韓流四天王に何か大切なものを守ってもらおうとしているのかもしれない。

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