本文へ移動

クローズアップ(文学科)|#1

SHARE TOPICS

大ヒットアニメの「鬼」との出会いから、古典文学の研究へ

「鬼」の奥深さに気づいて
“好き”が、学びを楽しむ力になった

研究のきっかけは、「鬼」への疑問

本を読む岡田さん

中学3年のクラス替えで、仲のよかった友達と離ればなれになってしまったときのことです。新しい友達をつくりたくて、近くの席にいたアニメ好きの子に話しかけるために、当時流行っていた鬼を題材にしたアニメを見始めました。それまでアニメをほとんど見たことがなかった私にとって、初めてちゃんと最後まで見た作品です。おかげで友達もでき、私はすっかりそのアニメの世界に夢中になりました。
中でもこころを惹かれたのは、鬼の描かれ方でした。鬼の過去や背景が丁寧に描かれていて、ただ倒すべき悪者ではない「意外な深さ」がありました。一方で、子どもの頃に絵本で読んだ昔話の鬼は、たいてい単なる悪者として登場します。同じ「鬼」なのに、この違いはどこからくるのだろう。そう感じたことが、古典文学の中の鬼を研究してみたいと思うきっかけになりました。

鬼は、ただの「悪者」じゃなかった

調べ始めてまず驚いたのは、古典文学に登場する鬼の姿が想像していたよりもずっと多様だったことです。人を襲って食べる鬼もいれば、女性ばかりを狙う鬼、そもそも人を食べない鬼もいます。中でも忘れられないのは、病で亡くなりかけた母親が子どもの前に鬼の姿となって現れる、という物語でした。母親の思いや感情が、鬼という形で表現されているように感じました。穢れや呪いといった怖いイメージだけでなく、家族への深い愛情を抱えた鬼もいます。「鬼=倒すべき悪者」という思い込みが、調べるほどに崩れていきました。
そして、その描かれ方は時代によっても移り変わっていきます。ただ恐ろしい化け物として描かれているときもあれば、人をだましたり、精神的に追い込んだりする姿のときもあります。同じ「鬼」ということばでも、時代ごとに込められた意味は少しずつ違うのです。さまざまな鬼に出会うほど、その奥行きに引き込まれていきました。だからこそ今は「なぜ鬼は人を“食べる”のか」という一つの問いにしぼって、その背景を読み解こうとしています。

「逆の立場から見る」という、文学の学び方

『酒呑童子由来』(部分)(大谷大学図書館所蔵)
『酒呑童子由来』(部分)(大谷大学図書館所蔵)
※京都で語り継がれる鬼・酒呑童子の物語

大谷大学の古典の授業は、思っていたよりずっと実践的でした。高校では文法を中心に学びますが、大学では作品の背景や、時代ごとのことばの移り変わりといった、もっと深い部分に踏み込んでいきます。先生の解説をただ聞くのではなく、自分たちで本文を読み解き、ことばの意味を調べ、わかったことを資料にまとめて発表します。古典文学を「読む」だけでなく、その「親しみ方」まで学べたことは、私にとって大きな経験でした。自分でどんどん調べていけるという手応えが楽しいのです。
先生方の視点にも、はっと気づかされます。たとえば現代文学の先生が、誰もが知っている国民的アニメ映画を物語の筋ではなく、背景の描写や表情、声色といった細部から読み解いてくださったことがありました。何気なく見ていた作品にもこんな見方があるのかと、視野がぐっと広がりました。
私の研究も同じです。鬼を退治する側ではなく、鬼の側に立ってみるとその悲しい過去に思わず共感してしまいます。立場を変えて物事を見る力は、相手の気持ちを想像する力にもつながります。意見がぶつかりやすい今の時代にこそ、大切な学びだと感じています。私の所属する中川ゼミは、学生同士はもちろん先生とも距離がとても近く、一人で抱え込まずに、みんなで進み具合を共有しながら研究できるのも心強いところです。

「好き」だから、学び続けられる

話す岡田さん

卒業研究は、約2万字という普段のレポートとは桁違いの文量と、1年近く向き合うことになります。だからこそ自分の関心と結びつけることが大切だと、身をもって感じています。文章を書くことが少し苦手な人ほど、自分が夢中で語れるものを入口にするとぐっと取り組みやすくなるはずです。
文学科では、とにかくたくさん書きます。毎回の授業で感想や考察を書き、ときには「読む人を裏切る結末にしてください」といったお題で、数百字の短い小説を自分で書く授業もありました。そうやって書き続けるうちに、考えを言葉にして伝える力が自然と身についていったように思います。
そして、こうして好きなものと結びつけて学んできた経験は、私の将来の夢にもつながっています。目標は、国語の先生になることです。自分が学ぶ楽しさを知ったからこそ、子どもたちにも好きなことを大切にしながら学んでほしい。「私はこんなふうに好きなものと結びつけて研究したよ」と、自分の経験を交えて伝えられたらと思っています。
これを読んでいる高校生の皆さんにも伝えたいのは、まずは自分の「好き」を見つけてほしい、ということです。無理に探さなくても大丈夫です。お風呂や電車の中のような、ふとした時間に自分と向き合ってみてください。
実は私も、入学前は「仏教系の大学だから、学ぶ内容もかたくて難しいのかな」と少し身構えていました。でも実際に通ってみると、自由で自分の好きなものを学べる場所でした。授業も自分で選んで組み立てられるので、構えすぎなくて大丈夫です。好きなものが見つかると、学ぶことも毎日の学生生活も、きっともっと楽しくなりますよ。

PROFILEプロフィール

  • 文学部 文学科 第4学年

    岡田 さくら

    滋賀県立大津高等学校 卒業

    ※記事の情報は、取材当時(2026年7月時点)のものです。

おすすめの記事一覧