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クローズアップ(国際文化学科)|#2

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漫画の世界で「元祖」とされる作家が、無名なのはナゼ?

1万冊の漫画を集める趣味から、
世界スケールの研究テーマにたどり着いた

迫力ある絵の向こうの、ヨーロッパ文化に興味

AKIRA(著: 大友 克洋)ⒸMASH・ROOM/KODANSHA
AKIRA(著: 大友 克洋)ⒸMASH・ROOM/KODANSHA

私の趣味は漫画を集めることです。自宅に1万冊の漫画があるというと、大抵の人に驚かれます。きっかけは中学1年のときに出会ったSF作品でした。近未来都市で起こる戦闘や破壊を描いたもので、1980年代に世界中で注目された日本の漫画です。迫力のある独特の絵や、目に見えない超能力をリアルに表現する技法に圧倒されました。その画風がヨーロッパの漫画「バンド・デシネ」の影響を受けたものと知り、世界の漫画文化にも目を向けたところから、その奥深さに引き込まれました。

本を読むシーン

バンド・デシネはフランス語圏で発展した漫画で、細かなところまで丁寧に描いた作品が多く、アートとしての一面もあります。そんなバンド・デシネの子ども向け冒険漫画や、1980年代に世界的にヒットしたSF作品などを読むうちに、作品の背景となる欧米の文化や考え方、歴史などにも興味が広がりました。大学選びで重視したのも、欧米の歴史や文化を学びながら漫画文化をより深く理解できる環境でした。大谷大学の国際学部 国際文化学科にある欧米文化コースでは、イギリス、アメリカ、フランス、ドイツの文化を深く学べることが魅力です。課外活動団体の中に長い歴史をもつ漫画研究部があることも入学の大きな決め手となりました。

漫画の元祖といわれる、ドイツの作家に注目

インタビューに応えるシーン

欧米文化コースの学びで特に印象に残っているのが、授業で知った「メンズーア」というドイツの決闘文化です。メンズーアは真剣を使って戦う1対1の決闘で、顔と頭には最低限の防具しか身につけません。攻撃をかわすために体や顔をよけたりすると臆病者として失格となります。危険から逃げずに勇気や名誉を示す伝統として、現代まで残っているのです。この授業を通して、逃げる意思を見せない気高さがドイツでいかに大切にされているかを実感しました。またメンズーアが残った歴史的な背景も学び、ドイツ人やドイツ文化への理解が深まりました。

私が第3学年から所属する欧米文化コースでドイツ文化ゼミを選んだ理由は、ドイツへの関心だけではありません。ゼミを担当する廣川先生の雰囲気が親しみやすく、自分の関心に合わせて自由に研究できる点にも魅力を感じたからです。研究対象は19世紀の挿絵画家・絵本作家で、詩人でもあるヴィルヘルム・ブッシュです。1832年ドイツに生まれ、漫画の元祖のひとつになったと考えられています。

作品を世界に広めたのは、まさかの無断転載だった

パソコンを操作しているシーン

ヴィルヘルム・ブッシュは、もともと物語に合わせて絵を描く挿絵画家でした。しかし、文章やストーリーを考える才能もあったため、しだいに文章も絵も自分で作るようになります。そこから目を引く絵に短い文章を添え、読者を楽しませる独自のスタイルを確立しました。これが漫画の元祖になったと考えられています。

その中でも、ブラックユーモアにあふれた絵本『マックスとモーリッツ』は世界的に有名になりました。しかし、ドイツ以外ではブッシュの名前はあまり知られていません。彼の作品はヨーロッパからアメリカへ広がり、多くの人がその絵や漫画を目にしていました。それにもかかわらず、なぜ、作者の名前は知られないままに、画風や技法だけが世界に広まったのか、それを確かめることが私の研究テーマになりました。

そこでまずブッシュが当時描いた挿絵や漫画、絵本作品などの出版物を収集しました。これらを研究材料として分析し、ブッシュ独自の技法などの調査を進めると、彼の作品がアメリカで無断転載され、それによって広く普及したことがわかりました。この調査から、作品が文化として国境を越える一方で、その作者が必ず有名になるとは限らないという発見につながりました。

自分で思いついた「~かもしれない!」を調べる楽しさ

インタビューに答えるシーン2

私の研究は、これで終わりではありません。1950年代以降のアメコミ(アメリカンコミックス)で有名な作家や、日本で「漫画の神様」と呼ばれる漫画家の絵に、ブッシュの作品と似ている点があることに気づいたからです。1950年代の日本は、貸本漫画の時代です。新しい表現を試した漫画も多く、私が特に好きな「劇画※」が生まれた時代でもあります。この時代に活躍した有名漫画家は、漫画の技法においてブッシュの影響を受けたのではないかというのが、私の仮説です。それを裏付ける資料集めや考察を、漫画研究部の部室などで趣味の延長のように楽しみながら進めています。

卒業後は、漫画への情熱を生かせる出版社に就職します。就職活動では、大手出版社からも内定をいただきましたが、最終的にはかつて漫画編集部があったという出版社にお世話になることに決めました。その出版社での採用面接の際、自分で漫画編集部を復活できるとお聞きしたことが決め手です。面接後もずっと「この出版社で新しい漫画づくりに挑戦できる」とワクワクしています。大学での学びや研究で身につけた広い視野で、悩みや孤独を抱える人にも深く響くような漫画作りに関わっていきたいです。

※リアルで写実的な絵柄や映画のような演出を用い、大人向けのシリアスで現実味のあるストーリーを描いた日本の漫画の表現技法およびジャンル

PROFILEプロフィール

  • 国際学部 国際文化学科 第4学年

    チョウドリ飛天

    京都つくば開成高等学校 卒業

    ※記事の情報は、取材当時(2026年7月時点)のものです。

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