保育園でのジェンダーを考える

私は、民間の保育園で21年間の勤務経験がある。現在は、「乳幼児の人間関係」を専門に保育者を育てる幼児教育コースに所属している。今回のテーマにそって、保育園でのいくつかの出来事を振り返る。当時は、ジェンダーに関する意識が低かった私が、保護者に注意された出来事である。15年ほど前お雛様の製作で、クラスの女児の顔写真を折り紙で作ったお雛様の顔にはり、お内裏様の顔には、男児の顔写真を平気ではっていた。その点をお母さんに注意されたことがあった。女児の歯ブラシはピンク、男児は青、布団の色もそうである。普段の保育園で知らぬ間に固定概念を押し付けていることがある。

時代は進み、今では私の意識も変わった。スカートを履いてきた4歳男児が、周囲の子に「え~男やのに変や~」と言われる場面に出くわした。その時には、「なんで変なん?みんな好きなもんはそれぞれ違うやろう?自分の好きなもんを大事にすることが大事なんやで~」と伝えることができた。大人の反応を子どもたちはよく見ている。「男らしさ」「女らしさ」ではなく、「その子らしさ」を大事にして保育をしているかどうかはちょっとしたやりとりの中であらわれるのである。

さらにもう一点保育園の中で気をつけていることがある。「男性保育者は、やっぱりダイナミックに遊んでくれていいわ~」などという発言である。女性保育者とは言わない。女性の医者を女医というが、男医とは言わない。男性保育者は、その逆である。呼び方の問題ではないが、男だからダイナミックとは限らない。繊細で、心優しいということも往々にしてある。子どもだけでなく保育者もその人らしい保育をすればいいのである。ジェンダーの問題を考える時、シンプルに「その子らしさ」「その人らしさ」が大事にされているかが大切ではないかと私は考える。

PROFILEプロフィール

  • 平塚 幸子 講師

    【専門分野】
    保育士・幼稚園教諭

    【研究領域・テーマ】
    乳幼児の人間関係/保育/幼児教育/個と集団づくり