文芸奨励賞 受賞作品

2021年度文芸奨励賞 受賞作品/テーマ「問い続けていること」

挨拶

大谷大学教育後援会会長 井上 正

大谷大学教育後援会文芸奨励賞は、学生支援事業の一環として本学の在学生を対象に文芸作品を募集し「言葉による表現意欲を奨励すること」を目的に、2006年度に創設された賞です。今年度のテーマは「問い続けていること」。このテーマのもと、昨年より多く246編の応募がありました。
 
今年は新型コロナウイルス感染症の影響によって行動自粛が求められ続けてきた中で、あたりまえにしていた日常生活をふりかえる作品が多くあったように思います。自粛生活の中で失われた日常生活や生活環境、人間関係等、一人ひとりの中にあるあたりまえとは何かが問われ、そのことを表現されているようでした。
 
また、社会の中に感じる差別的な事象に対して感じていることを表現された作品もあり、自己と社会の有り方を問い続けることで自己とは何かを思索している様子がうかがえました。
 
今後も自分自身の中に起こってきた問いを、問い続けていくことで、自分自身の深まりとなり、新たな世界が展かれていくことを念じています。

講評

大谷大学学生部長 山田 恵文

今年度の文芸奨励賞のテーマは「問い続けていること」でした。これは、本学が今年度、開学120周年を迎えたことを受けて、開学以来大切にされてきた教育の伝統を踏まえ、設定したテーマです。
 
応募総数は昨年度より大幅に増えて、246件でした。学生自身の多様な問いが寄せられて、非常に興味深い選考となりました。「自分とは何か」と自己を問う作品、「いかに生きるべきか」と生き方を問う作品、「当たりまえとは何か」と常識や日常を問う作品が多く見られました。また、今まさにそれぞれの専門分野で取り組んでいる課題や具体的な問いを述べている作品も見られました。
 
そのような中、最優秀作品は、自らの課題に一途に取り組む学生の姿がリアルに想起できるとともに、最後の一文が、不安を抱えながら挑戦している人へのエールになり得る点が高く評価できるものでした。
 
大学とは、自らが本当に問うべき課題を見出し、探究していく場所です。今回の取り組みを通じて、おのおのが自らの課題を真剣に問い尋ねる機会となったのであればと願うばかりです。
 
これからも学生諸君の豊かな感性に満ちた作品が多数生まれることを期待しています。
 

2021年度 受賞作品 【敬称略】

最優秀賞

安井 沙織【文学部 歴史学科 第4学年】

 一心不乱に取り組んでも
 確信がないと不安になる
 迷い選んで
 ひた走る
 答えは出ずとも
 不安が私を強くする

優秀賞

小野 夏実【社会学部 現代社会学科 第1学年】

 「どうすれば争いはなくなるのか」
 より
 「どうすれば仲良くなれるのか」って
 考える方がずっといい。

小松 日和【国際学部 国際文化学科 第1学年】

 人は死んだらどうなるのか。
 独り考えては泣いた小学生の冬。
 仏教とともに向き合う大学生の春。

佳作

船山 祥汰【修士課程 真宗学専攻 第2学年】

 わかりたい。
 と思うほど混乱する
 絡まっている紐をほどいていく姿勢で
 問い続けていきたい

谷山 忠義 【修士課程 哲学専攻 第2学年】

 問い続ける。気づけばそのこと自体を問うていた。

岡本 春奈【文学部 歴史学科 第4学年】

 私たちは問い続けている
 私たちは問われ続けている
 何故生まれてきたのか
 どう生きていくのか
 世界に
 自分自身に

澁谷 柚衣【文学部 歴史学科 第4学年】

 「会話はお控えください」
 溢れていた言葉が、途端に足りなくなった。
 本当に足りないのは、言葉だろうか。

岡本 煕子【文学部 真宗学科 第3学年】

 ❝らしさ❞って何だ
 女らしさ
 男らしさ
 らしさと自分との
 狭間でもがき
 ❝自分らしく❞

 ❝自分❞って何だ

宗圓 麻由【文学部 哲学科 第3学年】

 何故、地を這ってでも
         生きようと足掻くのか?

寺田 真帆【文学部 哲学科 第2学年】

 私は生まれ 私は死ぬ
 たったこの2点の間を結ぶもの
 私を私と言えるもの
 知りたくて今ここにいる

上杉 法恵【文学部 真宗学科 第1学年】

 聞くことの叶わない
 あなたが望んでいたこと

松木 彩【文学部 真宗学科 第1学年】

 誰かを否定しなきゃ、私一人肯定できないのか。

鈴木 希空【文学部 哲学科 第1学年】

 女性の身体で女性の服を着る。私は女性に見えるだろうか。
 人から見た「私」が「私」を決定づけるのか?

藤原 尚子【文学部 文学科 第1学年】

 私の知識は正しいか。
 私の言葉は美しいか。
 私の行動は誇れるか。
 この世の常識は、本当に正しいか。

遠藤 愛加【教育学部 教育学科 第1学年】

 私は心から愛し愛される居場所を探している。
 時間内なら何度ラインアウトしても戻ればいい。
      日和るな自分。

田代 颯【教育学部 教育学科 第1学年】

 生徒からこの先生の授業は楽しい ためになるから受け
 たいと思われる理想の教師像を問い続けている