海外研修プログラム報告

2023フィールドワーク【フィールドワーク(国際/アメリカ)】

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概要

日程 2023年8月19日(土)~8月30日(水) 12日間
参加数 5名(引率1名)
主な研修地
▼サンフランシスコ、オークランド、ロサンゼルス

  • 米国仏教学院
  • サンフランシスコ仏教会
  • サンフランシスコ禅センター
  • ウエストコビナ東本願寺
  • ニューポートビーチ東本願寺
  • サウスビーチイスラミックセンター
  • バークレー東本番寺
  • リトル東京
                等
 

研修報告

2021年度、2022年度の当研修は、新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け、現地研修の実施ができず、代用としてリモート講義を行いました。今回、初めて正規の科目として現地研修を実施することができました。 学生は、現地で過ごした9日間を通して、アメリカの宗教事情、とりわけアメリカにおける真宗の現状と課題を鮮やかに把握するために、様々な宗教施設を訪れ、それらに携わっている方の講義を受けました。合計16ヵ所の宗教施設を訪問し、仏教・キリスト教・イスラム教の僧侶を含む計20人の先生から話を伺いました。

8月19日から24日までバークレー市内に滞在して、市内の東西両本願寺の寺院、西本願寺の開教活動の拠点のひとつとなっている浄土真宗センター、そして毎田仏教センターを訪問することによって、カリフォルニア州の北部における真宗の現状を視察しました。そしてそれらの施設で長らく開教活動を展開した先生の講義から、東西両本願寺の開教活動の歴史と今後の可能性について種々に考察しました。
 
また、米国仏教学院(IBS)という大学院大学の教員から講義を聞くことによって、アメリカでの大学院進学の可能性について考える機会に恵まれました。さらに、仏教以外のアメリカの宗教に関して知るためにモルモン教の神殿を訪れ、施設の見学も行っています。
そして、アメリカの宗教文化に禅を根付かせるために大いに貢献した鈴木俊隆老師が設立したサンフランシスコ禅センターでは、施設を見た後、座禅を体験することができました。学生たちは、アメリカで仏教と禅、真宗がどのように浸透しているかも学びましたが、日本における受容の差をも認識しました。

24日から29日までロサンゼルス市の中心街に近いリトル東京のホテルに滞在しました。リトル東京は、ロサンゼルスのダウンタウン内にあるアメリカ最大の日本人街の通称で、日系移民がかつて多く住んでいた地区です。リトル東京の寺院や教会を訪れ、ロサンゼルス近辺の真宗の現状を視察したのはもちろん、日本仏教の他宗派の現状についても知りました。東西両本願寺の別院を訪れ、その活動に関わっている僧侶の話を聞き、そして曹洞宗、真言宗、浄土宗の開教従事者の話を聞く機会もありました。

加えて、リトル東京にある日系アメリカ人博物館を参観し、現在の真宗寺院のあり方に大きな影響を及ぼしている日本からの移住の歴史について学びました。日系アメリカ人については、事前学習でとりわけ力を入れて学んでいる部分であり、学生は机上の学習時より以上に、苦難の歴史の実態を明確に感じ取っていました。更にロサンゼルス中心部にあるカトリックの聖堂、そしてリトル東京にある日系のプロテスタント教会を訪れ、アメリカにおけるキリスト教の現状について学びました。最終日は、ロサンゼルス郊外にある二軒の東本願寺の開教寺院で開教使の話を伺い、その後はイスラムのモスクを訪問し、アメリカにおけるイスラムの現状についての講義を受けました。

このように現地研修は盛りだくさんの講義となりましたが、それぞれの講義終了後に、学生は積極的に、しかも的確に様々な質問をしました。多数の先生方による対面講義は非常に新鮮であり、主体的に学びを深めている表れでした。また、宗教寺院をいくつも訪問したことは、現地の宗教文化を肌身に感じる有意義なフィールドワークであったと断言します。
  • 自由行動では、学生たちは教員の力を借りずに自分でMLB(メジャープロ野球)のチケットを買い、自力で球場まで行って観戦する等、アクティブに行動し、学生同士が親睦をより深める経験にもなりました。グローマンズ・チャイニーズ・シアター等、アメリカならではの観光地も訪れています。

帰国後、10月2日に学科の教員と他の学生を対象に報告会を開催しました。学生たちは現地で撮った写真を投影し、それぞれの先生の講義について概略を分担して発表しました。現地研修中の学生の様子、この報告会におけるプレゼンテーションと課題レポートの内容から、学生にとって研修は貴重な機会であったと感じました。研修の振り返りにより、適切な自己把握、そして世界の把握、自己表現に資する経験となったことが一目瞭然にうかがえました。アメリカにおける仏教と真宗の現状課題を把握する目的は、十分達成できたと考えます。 
 【Michael J. Conway(中国浄土教/親鸞思想/近代教学)】