海外研修プログラム報告

2014文化研修【ブッダを歩く(インドフィールドワーク)】

概要

日程 2014年8月21日(木)~8月28日(木)【8日間】
参加数 13名(引率者2名)
主な研修地 ・ラージギル(霊鷲山・王舎城牢獄跡)
・ナーランダー(ナーランダー大学跡)
・ブッダガヤ(大塔・ナイランジャラー河・スジャーターストゥーパ・金剛法座)
・ヴァラナシ(ガンジス河岸の沐浴場・火葬場)
・サールナート(ダメークストゥーパ・迎仏塔・サールナート博物館他)
・アグラ(タージマハル・レッドフォート)
・マトゥーラ(マトゥーラ州立博物館)

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研修報告

ブッダガヤ(大塔を背景に)

「ブッダを歩く(インドフィールドワーク)」は、文字通り、広大なインドの大地を舞台としてフィールドワークを行う研修授業です。教室での学びを越えて、インドの大地での学びへ。短期大学部仏教科における日常の学びを踏まえ、インド北部の主要な仏教遺跡をめぐり、学びを深めるねらいがあります。さらには、インドという国がもつ強烈なエネルギーを体感するねらいもあります。第三回目にあたる今年度は、13名の学生が参加しました。

日程は、首都デリーに到着後、インドの国内線で空路ビハール州のパトナへ移動。専用バスに乗り、パトナからラージギル、ブッダガヤ、サールナートへ。そしてヴァラナシから寝台列車でアグラ、最後に再びデリーに戻り、日本に帰国、という日程でした。

最初にフィールドワークしたのは、ラージギルに位置するナーランダー大学遺跡。ナーランダー大学は、『西遊記』に登場する三蔵法師のモデルとなった中国の僧侶、玄奘三蔵の留学地としても有名ですが、仏教科が開講する授業「こころの探究」のテーマである「唯識」という仏教心理学が発展した場所でもあります。かつてインド最大の仏教センターであったその遺構に足を踏み入れながら、「深層意識(アーラヤ識)が生み出した表象あるのみ」とする唯識思想を改めて問いなおす機会となりました。
続いて訪れた霊鷲山。八月の強烈な日差しを受けながら、また現地の人たちとの会話を楽しみつつ、30分ほどかけて山頂まで登りました。霊鷲山は、仏教科の授業「浄土経典を読む」で学ぶ『大無量寿経』『観無量寿経』、同じく「大乗経典を読む」という授業で学ぶ『法華経』などの有名な経典が説かれた舞台です。ブッダは山頂にある鷲の形をした巨大な岩の上に座り、教えを説かれたといいます。その場所で『大無量寿経』の一部である「嘆仏偈」というお経を上げました。普段から慣れ親しんでいるはずのお経のことばも、インドでは一層ありありと心に迫ってくる気がしました。

                             ブッダガヤの金剛法座                                            サールナートのダメークストゥーパ前


そして、今回のフィールドワーク最大の目的であるブッダガヤへ。世界各地の仏教徒が巡礼者として集うこの地は、厳かな空気に包まれています。そうした中、まさしく釈尊がさとりを得た地点、シッダールタが目覚めた者「ブッダ」と成った菩提樹の下を目の前にすると、不思議な感動に包まれました。「すべてはここからはじまったのだ」と感じました。参加者・引率者ともに「なぜ自分は仏教を学ぶのか」ということの意味を、理屈ではなく肌で感じることができる貴重な経験となりました。

後日、さらにサールナートへ。ここはブッダ最初の説法(初転法輪)がなされた地、教えを説くひと(ブッダ)、教えを聞くひと(サンガ)、説かれた教え(ダルマ)がはじめて揃った地であり、文字どおり「仏教」(仏の教え)の出発点となった地です。天候にも恵まれ、澄み切った青空の下、仏教科の授業「ブッダのことば」「仏教と人間」で学んだ「中道」「八正道」「四聖諦」というブッダの教えが、この地で初めて説かれ、そして世界に広がっていったのだと思いを馳せました。

実際にインドの大地に身を置いてみると、教室で学んだ様々な事柄が甦ってくるとともに、それが新しいイメージを伴って自分の中に定着します。これがフィールドワークの魅力なのではないでしょうか。今回も中身の濃い研修となりました。

【上野 牧生(仏教学)】