海外研修プログラム報告

2010文化研修【インドの宗教と文化(インド仏教遺跡研修第1班)】

概要

日程 2010年8月24日(火)~9月7日(火)【15日間】
参加数 18名(引率4名)
主な研修地 ●仏跡関連
四大仏跡(ルンビニー、ブッダガヤー、サールナート、クシーナガラ)
カピラヴァストゥ、サヘート(祇園精舎)・マヘート(舎衛城)、
ヴァイシャーリー、ラージギル(王舎城)、ナーランダ大学跡

●博物館関連
デリー国立博物館、サールナート考古学博物館、マトゥラー州立博物館

●その他
デリー市内観光(ガンディー記念の場所/ビルラーハウス、ラージガート など)
ヴァラナシ・ガンジス川西岸の沐浴風景見学・旧市街探訪
インド舞踊鑑賞、タージマハル

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研修報告

仏教が誕生したインドとはどのような場所であろうか。ぜひとも実際に自分の目で確かめてみよう。毎年ひろく全学科の学生たちにこのように呼びかけ、「インドの宗教と文化」と題した事前講義で渡航の準備をしたうえで、夏期休暇期間中に15日間の研修旅行を実施しています。

この研修の最大の目的は、仏教の四大聖地,すなわち釈尊誕生の地であるルンビニー(現在ネパール)、成道の地ブッダガヤー、初転法輪の地サールナート、そして入滅の地クシーナガラを訪れることにあります。もっとも、首都デリーの空港に降り立った瞬間から、日本とまるで違った状況のなかに投げ出されて、様々なことに驚いたり戸惑ったりあるいは歓喜することになります。

我々が渡航する時期は、ちょうどモンスーンの終わり頃にあたります。今年は雨が長く続き、比較的暑さが和らいだことが大いに幸いし、最初から体調を崩すこともなく各地を訪れることができました。農村地帯を行くと、子供たちは我々に手を振り、とびっきりの笑顔で追いかけてきます。車窓からみる雨の大地は、インド映画の巨匠サタジット・レイ(Satyajit Ray)監督が「大地のうた」で描いてみせたベンガルの豊かな田園風景を、汽車を見に野原を越えた少年オプーとその姉が激しい雨にぬれながらはしゃいで走る場面を思い出させます。

大都会から農村地帯へ、再び都会へと移動して、街の様子やそこに暮らす人々の姿を垣間見ながら、学生たちはそれぞれの仕方でインド世界に触れることになりました。そんな学生たちと共に過ごした時間は実に楽しいものでした。

ベナレスにてインド舞踊鑑賞                                             タージ・マハルにて    

幹が太く生き生きと力強い菩提樹の木は、インドでは決してめずらしくありません。太陽に照りつけられて疲れたとき、菩提樹の木陰でゆっくりとした時間を過ごしていると、中勘助が著した不思議な物語『菩提樹の陰』が頭に浮かんできます。アマラーヴァティーに住む彫刻師は亡き恋人の彫像を刻み人間としてよみがえるよう神に願います。ところが、よみがえった彼女はあまりに苦しい境遇に直面し「今はじめて人生の苦というものを知った」と言います。そして「今はじめて人間が彫像よりも幸福でないことをさとった」と語るのです。

青年シッダールタはカピラヴァストゥの城門を出てはじめて老病死の苦悩に直面します。そして、後にピッパラ樹(この木が後に菩提樹という呼称を得る)のもとで人生の苦悩の原因を見定め,無上の正覚を得るのです。

学生たちと四門出遊のエピソードについて語りながらカピラヴァストゥの遺構を見学したことは、ブッダガヤーの菩提樹を仰ぎ見たことは、何ものにも代え難い経験であったと言えるでしょう。
【箕浦暁雄(専門/仏教学)】