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きょうのことば

きょうのことば - [2008年03月]

汝自ら当に知るべし。

「汝自ら当に知るべし。」
仏説無量寿経(『真宗聖典』p.13)

 上に掲げた言葉は、『仏説無量寿経』上巻にあります。そこには一人の国王が、国や王位をすべて棄てて、自分が歩むべき道を求めていく物語が説かれています。その国王はある時、世自在王仏(せじざいおうぶつ)という仏の説法を聞くことによって、大変感動しました。そして自分もこの仏のようにこの上ないさとりを得たい、そういう深い願いを発(おこ)しました。このような深い願いを発した存在(菩薩)の名前が「法蔵(ほうぞう)」と説かれています。

 この法蔵菩薩は、さとりを求める自分のために、どうか広く教えを説いてください、その教えにしたがって自分は修行していきたい、そのように世自在王仏にお願いをしました。法蔵菩薩のこのような願いに対して、世自在王仏が答えた言葉が「汝自ら当に知るべし」(「あなた自身で知っていきなさい」)というものだったのです。

 この言葉は、法蔵菩薩がせっかく尋ねているのに、突き放した応答のような感じもします。しかし世自在王仏は、冷淡な心持ちでこのように応答したのではなかったのです。逆に、法蔵菩薩の心に発った感動や願いを、本当に大切に思ったからこそ、あえてこのような言葉で応答したのです。なぜなら、自分の願いを成就していく道とは、その願いを自分自身の内に徹底して自覚していくところにしかないからです。もし自分の願いが曖昧になっていくならば、そこには歩んで行く道もまた見失われていくからです。

 私たち自身のことを振り返ってみましょう。私たちは、自分自身の本当の願いがしっかり自覚されているでしょうか。さまざまな問題を抱えて悩んでいる私たちの根底には、自分の本当の願いが一体何なのか分からない、そういう根本問題があるのではないでしょうか。ああもしたいし、こうもしたいと思う。しかし本当のところ自分はどうしたいのか、それが分からない。だから自分が一生をかけて歩んでいく道がなかなか定まりません。自分自身のことであるはずなのに、自分の根本の願いがはっきりしない、そういうことがあるのではないでしょうか。そして、自分の本当の願いを明らかにしていくためには、自分自身の心の声に徹底して耳を澄ましていく必要があるのです。

 法蔵菩薩に初めて発った深い願い、そのことを世自在王仏は本当に大切に思ったのです。それゆえに、「汝自ら当に知るべし」と応答し、自分の願いを徹底して自分自身の内に明らかにしていくよう自覚を促したのでした。この促しがあったからこそ、法蔵菩薩の願いはさらに深められ、明確なものとなっていったのです。このように、自分自身の本当の願いを、徹底して明らかにすることを呼びかけているのが、「汝自ら当に知るべし」という言葉なのです。

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