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きょうのことば

きょうのことば - [2004年02月]

汝の欲することをなせ

「汝の欲することをなせ」
ミヒャエル・エンデ(『はてしない物語』岩波書店 p. 317)

 「生ける屍」という言葉があります。何か大きな挫折を経験したりすると、心臓が動いているという限りにおいては生きているのですが、何もする気が起こらない、生きる意欲さえなくなってしまう状態を意味します。そうなると、生きているという確かさを感ずることが出来ません。その意味で、生きることを動機づけているものは、「欲する」ことであると言ってよいでしょう。だから、ミヒャエル・エンデは、童話『はてしない物語』の中で、「汝の欲することをなせ」という言葉で、生きることは「したいことをする」ことだと語っているのです。

 ところが、このことについて主人公のバスチアンという少年が、「『汝の欲することをなせ』というのは、ぼくがしたいことはなんでもしていいっていうことなんだろう、ね?」と尋ねたことに対して、「ちがいます。それは、あなたさまが真に欲することをすべきだということです。あなたさまの真の意志を持てということです。これ以上にむずかしいことはありません。」と、ライオンのグラオーグラマーンに語らせています。

 生きることは、単純に、この「私」のしたいことをすることではなく、本当にしたいことをなすことだということです。「これ以上にむずかしいことはありません。」とは、私たちが、何が本当にしたいことかを見つけるのが、大変困難だということを意味します。

 では、どうして自分のしたいことをすることが、生きることではないのでしょうか。それは、私たちが、何の疑いもなく、前提にして生きている「私」というものは、どこまでも自分の思い通りになることを求めるものだからです。ところが、どこにも思い通りになる現実はないのです。だから、自分の思い通りに生きようとする人生は、いつも不平不満を持つことになります。それでは、生きたことが生きたことにならないのです。

 物語の中で、「愛することができるようになりたい」と語るバスチアンに、「とうとう最後の望みを見つけたのね。愛すること、それがあなたの真の意志なのよ。」とアイゥオーラおばさまは、教えます。愛するとは、目の前のすべての現実を無条件に受け入れることです。現実を愛し、無条件に受け入れることのできる力によって、自分の思い通りにしたいという心を打ち破るのです。そして、そこに兄弟姉妹という親しいまじわりの世界を生み出すこと、それが生きることの意味だというのです。

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