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今という時間

今という時間 - [247]

「されどネクタイ」
木場 明志(きば あけし)

 6月1日に始まったクールビズ。それなりに定着していると見うける。少なくとも、上着を持たない出勤風景は確実に増えた。省エネのためというが、思えば、ビジネスマンの背広上着・ネクタイは武士の刀のようなもので、武装であり、身分の象徴である。
 となると、武装・身分の今日的な是非が問われよう。6月20日の日韓首脳会談では、小泉首相が互いにノーネクタイでと持ちかけ、断られたと聞く。武装的気分において盧武鉉大統領が上回っていたのだろう。気を引き締めるための必須アイテムとは思えないが、現在の立場の違いを感じさせられた。政務に臨むいでたちは、前近代の日本では衣冠束帯や袴裃だった。決して涼しい服装ではない。しかし、気を引き締める効果は多大だった。洋装となった現代ビジネスマンが引き継ぐべきは、実のところ気分の引き締めであり、服装についてはこだわるべきでない。
 気候上からも、日本以南の国々の夏に、背広・ネクタイはあわない。上着なし、ネクタイなしの公務員・ビジネスマンはアジアに出ればむしろ普通である。冷房を強くしたオフィスには、先進国並みのサービスやステータスを見せつけようとする意図がある。
 クールビズは、ネクタイがないとシャキッとしない自らの習慣を考え直す機会であろう。アジアの中の日本を自覚することや、ネクタイに縛られた自分の文化からの脱却に繋がるかもしれないのだ。

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