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今という時間

今という時間 - [171]

「モンゴル文字の切手」
松川 節(まつかわ たかし)

 先頃、日本・モンゴル外交関係樹立30周年を記念した切手が発売された。モンゴルの民族楽器・馬頭琴が中央に描かれ、左側に縦書きの伝統的モンゴル文字で「日本(ヤポン)モンゴル友好(ナイラムダル)」と記されている。この文字は元々13世紀ジンギスカンの時代にウイグルから借用されたもので、以来800年の間に少しずつ改変されてきた。モンゴル国では1940年代にロシア文字に替えられたが、1990年の民主化以降、モンゴル文字復活の動きも見られている。
 この切手のモンゴル文字が物議を醸しているという。モンゴル語で「日本」は(ローマ字で転写すれば)yaponと綴るべきところだが、切手ではjabonとなっており、誤りだというのである。
 しかしこれは間違いというわけではない。モンゴル文字の歴史を見ると、y を写す専用の文字は17世紀に満洲文字から逆輸入されたのであり、p を写す専用の文字は16世紀にチベット文字から創られた。それ以前の、ジンギスカン時代に遡る「本来の」文字パーツだけを使う場合、ヤポンはjabonと書かざるをえない。つまりこの切手は、文言は現代モンゴル語に基づきつつも、字形・書体についてはモンゴル帝国時代のそれに近づけてデザインされたのである。
 30年を経た今、モンゴルと日本の関係はますます近しく感じられる。一層の友好親善を進めるためにも文化的背景の理解を大切にしてゆきたい。

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